2016 Fiscal Year Research-status Report
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26870590
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田谷 修一郎 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 講師 (80401933)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 空間知覚 / 個人差 / 立体視 / 錯視 / 身体 / 奥行き手がかり / 心理物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
二次元網膜像に基づく三次元空間の復元は一意に解の求まらない「不良設定問題」である。たとえば傾いた長方形面と直立した台形面は,網膜像上ではともに台形として投影されるため,単眼網膜像の形だけを頼りに見ているものが台形なのか長方形なのかを判断することは不可能である。しかし我々の身の回りには台形のものよりも長方形のもののほうが多いため,視覚系は網膜上に台形として投影された面を台形であると判断するよりも傾いた長方形であると判断することを好むし,その判断が妥当である可能性も高い。このように,視覚系は不良設定問題を解くために外界の統計情報(制約条件)を用いていると考えられる。 こうした視覚系による統計情報の利用において,我々の身体が果たす役割を明らかにすることが本研究の大枠の目的である。平成28年度は平成27年度に引き続き,左右眼間の距離が立体視の不良設定問題を解く上での制約条件として用いられている可能性について,眼間距離の個人差を手がかりに検討した。さらに本年度は,身体の可動範囲が観察者自身の身体の見えを制限することについて着目した検討を行った。我々の身体は動かせる方向や角度に制限(生体力学的制約)があり,そのために自分の身体について特定の向きや角度からしか通常は目にしない。したがって身体像には,そのような観察条件上の制限をもたないその他の物体よりも,見え方に視点依存性の強いことが予測される。具体的には,生体力学的制約により普段見ないような角度から撮られた身体の写真には,統計情報の不足により,2次元像内の3次元情報を利用して3次元空間をヴェリディカルに復元するための視覚系の機能(恒常性)が働きにくくなると予測した。平成28年度はこの予測を支持する心理実験の結果についてICP(国際心理学会)などで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年度より所属が変わり環境が大きく変化した結果,研究環境の再構築に時間がかかった。特に現職場で実験を再開するにあたり倫理審査を通す必要があったが,これに予想以上に手間取り研究の開始が大幅に遅れた。計画していた研究の完了までにはさらに時間が必要と考えられるため,1年間の事業期間延長を申請し承認を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の3年目の予定であったプリズム順応実験を速やかに行えるように実験参加者のリクルートなど準備を進める。また,まだ実行できていない実験についてテスト・バッテリーを組み,データ取得の時間効率を高める。さらに実験参加者のアレンジ等を担う研究補助者を雇うことで論文の執筆などアウトプットに割り当てる時間を確保したい。
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Causes of Carryover |
プリズム眼鏡を用いて擬似的に瞳孔間距離を拡大・縮小し,この眼鏡に順応することが空間知覚に及ぼす影響を検討する実験を予定していたが,平成28年度より異動した所属機関での研究再開が諸事情により遅れたためにこの実験を行うことができず,そのための予算を翌年に丸ごと繰り越すことになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
申請当初の3年目実験計画に従い,プリズム順応実験を行う。
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Research Products
(2 results)