2014 Fiscal Year Research-status Report
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26870620
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渡邉 大輔 日本大学, 芸術学部, 研究員 (50645629)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 映画観客 / 児童 / 戦後日本映画 / 教育映画 / ラジオ / テレビ / マンガ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、戦後日本における「児童の映画観客」の成立・進展の過程や実態を検討することを目的とした。近年、観客史研究が盛んになりつつあるものの、日本における「児童」を含む年少の映画観客を対象にした総合的な研究はまだほとんど存在しておらず、とりわけ戦後の時期にいたってはほとんど調査研究がなされていない。 したがって、本研究では、主に占領期から60年代の高度経済成長期までを対象として、児童文化史や大衆文化史、あるいは比較メディア史的なアプローチを踏まえながら、当該時期の児童の映画観客の実態について多角的な調査分析を行う。 平成26年度の実施計画では、基礎研究として貴重図書を含む文献資料の収集、資料・作品目録の作成を中心に行うとした。すでに研究代表者の継続的な研究成果として、戦前から戦中期にいたる児童観客及び映画教育関連の資料の収集があった。これを踏まえて、これまでは調査してこなかった戦後特有の児童向け大衆文化に関わる文献や言説資料などを調査することを目指した。 当該年度では、実施計画のうち、国立国会図書館、国立国会図書館国際子ども図書館などが所蔵する1950年代の図書・雑誌類に掲載された児童観客関連の記事や言説資料、及び『視聴覚教育』『放送教育』などのバックナンバーの調査収集を行った。また、京都国際マンガミュージアムでのマンガ資料の収集、神戸プラネット映画資料館での東映教育映画の資料及び作品試写、大阪府立中央図書館国際児童文学館所蔵の児童書、映画台本、文献資料の収集などを行った。それらの資料を総合し、1、50年代を中心とした児童観客の映画受容をデータとして取りまとめた。2、児童向け映画と同種のラジオ、テレビなどの大衆文化との比較を行った。その結果、1950年代前後の日本の児童観客の映画受容の統計的な実態や周辺メディアとの影響関係などが、ほぼ初めて総合的・多角的に明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた出張機関への調査も実施し、研究課題に関する基礎的な成果は達成できたものの、研究計画に挙げた出張機関などに、当初想定していたほどの文献資料が確認できなかったために文献資料の収集が進まなかった。また、関連作品の試写閲覧なども充分に行えなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の研究の推進方策に関しては、1、主に1960年代の児童の映画観客における映画受容の実態調査と、2、当該時期の児童に関連する大衆文化、とりわけアニメーション文化と児童観客との関わりを、比較メディア論的な視点からの分析調査として行っていく予定である。前年度の研究成果において、戦後日本映画の児童の映画観客の実態の概況が明らかになったため、それを踏まえて、さらに続く年代におけるその推移や展開の分析を進めていくためである。 また、研究計画においても、平成27年度は戦後国産アニメーションとの影響関係の分析を課題としていた。本研究課題においては、占領期以降のさまざまな映画教育運動(映画教室運動や東映教育映画など)の動向が一貫して児童の映画受容と密接な関わりを持ってきたことに注目してきたが、今後の研究においても、そうした従来の関係が60年代以降の国産アニメーションの発展とどのように関係していたのかという点に焦点を当てていきたい。また、同時に、アニメーション以外のマンガ、ラジオなどの児童向けの大衆文化との比較分析も行っていく予定である。 教育関係文献を所蔵している大阪教育大学付属図書館、明星大学戦後教育史研究センター、成城大学教育研究所などの機関への調査は予定通り実施するが、他に教育映画祭関連の資料が所蔵されていると考えられる外交史料館などの調査も予定している。 また、当初研究計画に盛り込んでいた児童観客関連資料の図像データベースを含む目録化作業であるが、関連文献が当初の予定よりも体系的に収集しにくい(例えば、京都国際マンガミュージアムのように写真撮影や複写を禁止している機関などもある)面などがあり、本研究課題で調査収集した文献をどのような形で成果として示すかは再度検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究課題に関連する経費を支出する過程で、やむを得ず、未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、前年度に生じた未使用額と併せて、1、前年度から継続する関連文献・資料の購入・調査と、2、関連機関への出張を含んだ調査分析の経費に使用する予定である。1に関しては、国立国会図書館、杉並アニメーションミュージアム、明治大学米澤嘉博記念図書館、外交史料館などでの関連資料の複写・撮影、また、貴重図書、DVDなどの購入、国立近代美術館フィルムセンターでの特別試写代金などに充てる(40万円)。2に関しては、教育関係文献を所蔵している大阪教育大学付属図書館、明星大学戦後教育史研究センター、成城大学教育研究所などの機関への国内出張と複写・撮影の経費に充てる(25万円)。
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Research Products
(2 results)