2014 Fiscal Year Research-status Report
分子振動の倍音の吸収強度と水素結合形成および溶媒効果
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26870818
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Research Institution | National Institute of Technology, Kumamoto College |
Principal Investigator |
二見 能資 熊本高等専門学校, 生物化学システム工学科, 助教 (90411785)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 赤外吸収強度 / 非調和振動数計算 / 水素結合 / 溶媒効果 / 近赤外分光法 / 赤外分光法 / 量子化学計算 / 倍音 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、赤外・近赤外分光法と量子化学計算法を用いて、水素結合の形成および、溶媒の存在が、分子振動の倍音の振動数と吸収強度に与える影響を明らかにすることが目的である。平成26年度は、(1)水素結合形成による振動数と吸収強度の変化の測定、(2)計算レベルの違いによる水素結合形成の実験結果の再現性の検討の2点を取り組んだ。 (1)では、メタノールおよび、ピロールのOHおよびNH伸縮振動について、ピリジン誘導体との水素結合形成による振動数と吸収強度の変化をフーリエ変換型赤外/近赤外分光光度計(FT-IR/NIR)を用いて測定した。その結果、いずれの水素結合形成においても、基本音の吸収強度は増大し、第一倍音の吸収強度は観測が困難な程に減少することが分かった。(2)では、密度汎関数法DFT(B3LYP、M06-2X)と幾つかの基底関数を用いて、伸縮振動の振動ポテンシャル関数と双極子モーメント関数を求め、この振動ポテンシャル関数と双極子モーメント関数を用いた非調和性を考慮したシュレディンガー方程式の数値解析によって伸縮振動の振動数および吸収強度を算出した。B3LYPとM06-2Xではピロール-ピリジン水素結合会合体のポテンシャル局面上の安定な構造は異なった。しかし、ゼロ点振動準位を考慮した平均構造はいずれも同様な構造であることが分かった。この構造についてNH伸縮振動の基本音・倍音の振動数と吸収強度を量子化学計算によって見積もると、水素結合の形成による基本音の吸収強度は増大して第一倍音の吸収強度は減少する結果を得た。この計算結果は、四塩化炭素溶媒中で観測されたピロール-ピリジン会合体の実験結果と一致した。変化の傾向は、B3LYP、M06-2Xおよび 用いたいずれの基底関数でも再現し、より大きな基底関数程、実験値に近い値を示した。同様の結果がメタノール-ピリジン水素結合会合体でも得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水素結合の形成前後でのOH(またはNH)伸縮振動の振動数と吸収強度について赤外・近赤外吸収スペクトルを測定し、水素結合形成が伸縮振動の基本音・倍音の与える影響の傾向を掴むことができた。また、水素結合の形成による分子振動の基本音・倍音の振動数と吸収強度を変化を再現する計算レベルをおおむね絞り込めた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き水素結合形成の作用も調べるが、今後は溶媒効果の作用を中心に調べる。様々な溶媒中での赤外・近赤外吸収スペクトルの測定と連続誘電体モデルによる量子化学計算を行い、実験と理論の両面から分子振動の倍音の振動数と吸収強度に与える溶媒分子の影響を検討する。
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Causes of Carryover |
3月に研究発表で参加した日本化学会春季年会の旅費が含まれていない為、約10万円の差額が生じている。 校舎の改装工事による実験室の移動があり、購入品の破損や劣化、紛失の危険性を避ける為、初年度購入予定の実験用試薬と器具の幾つかの購入を次年度に先送りすることにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
校舎の改装工事による実験室の移動により先送りした物品を今年度に予定通り購入し、研究を実施する。
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Research Products
(4 results)