2015 Fiscal Year Research-status Report
様々な意識状態に共通して適用可能な意識メーターの開発
Project/Area Number |
26870860
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大泉 匡史 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 基礎科学特別研究員 (30715371)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 意識 / 意識レベル / 統合情報理論 / 情報理論 / 情報幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、意識の統合情報理論(Integrated Information Theory of Consciousness)が注目を集めている。この理論は情報理論の枠組みから脳内で情報がどれだけ統合されているかを測る量、統合情報量を定義し、統合情報量の大きさが意識レベルに対応するという仮説を提唱している。例えば、睡眠時などにおいて意識レベルが下がっている時には脳内の統合情報量が大きく減少すると予測している。本研究は、統合情報理論の理論的な発展と実験データを用いた検証を目的とする。最終的には統合情報量を基に、麻酔深度、睡眠深度のモニタリング、植物状態の患者の意識状態の判定などに適用可能な実用的「意識メーター」の開発を目指す。本年度は主に以下のことを行った。 (1) 実データで計算可能な統合情報量の新しい指標を、情報理論で用いられるミスマッチな復号化という概念を使って導出した(Oizumi et al., 2016, PLoS Comp Biol)。提案した指標を計算するMATLABのコードをweb上で公開し、自由に利用可能にした。https://figshare.com/articles/phi_toolbox_zip/3203326 (2) 提案した指標を用いて、ヒトのECoG(皮質内脳波)データを解析し、統合情報の構造と意識の内容が相関することを示した(Haun, Oizumi et al., 2016, submitted; preprint available on bioRxiv)。 (3) 統合情報量を情報幾何学を用いて解釈し直し、情報幾何学の観点から様々な因果性の指標を統一的に理解する枠組みを提案した(Oizumi et al., 2015, submitted; preprint available on arXiv)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は統合情報量の指標に関する理解が大幅に進んだ。特に、情報幾何学を用いることによって様々な因果性の指標に関して統一的な理解を得ることができ、統合情報量と他の因果性の指標(transfer entropy, Granger causality, predictive informationなど)との関連がついたのが非常に大きな成果であった。これによって、実データ解析の結果の解釈が明確になり、今後の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
統合情報量の指標を実データで計算するにあたって、以下の課題の解決することが必要である。(1)周波数分解の方法 (2)非線形な時系列データに対する有効な近似法 (3)最適な分割を高速に探索する方法。これらの課題の解決策は既に考案済みであり、それらの有効性を計算機シミュレーションと実データ解析によって調べるのが今後の課題となる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は1881円と少額のため、この金額だけでは研究に必要なものは購入できないので、次年度に持越しした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の旅費として使用する。
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Research Products
(3 results)