2015 Fiscal Year Research-status Report
未固結堆積物・ガウジの固化に伴う変形時の力学・水理特性の変化に関する実験的研究
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26870918
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
野田 博之 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 研究員 (50619640)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脆性・塑性遷移 / 圧力溶解クリープ / 摩擦実験 / 地震サイクル / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
大地震の破壊開始点は地震発生領域の下限近くとなる事が多い[e.g., Sibson, 1982]。その領域における岩石物性に関し、「流体の影響」なる単語は業界でよく耳にするが、それが具体的にどの様な物であるかを示した例は少ない。2015年1月にGeologyに報告された [Hirth and Beeler, 2015] 岩石の脆性・塑性遷移域における有効応力則(間隙流体圧の力学的影響)に関する予想を受け、今年度はアナログ物質(NaCl)を用いた摩擦実験を主なターゲットに据えて実験を行った。 NaCl 粉末が高温・高圧で固結し、摩擦的な挙動から流動的な挙動へ遷移する領域において、間隙流体圧の影響を実験的に測定する事に成功した。その結果、以下の事が明らかとなった。1.間隙流体圧は封圧の影響を中和する向きに働くが、その効果の係数αは脆性・塑性遷移域を通じて1である。上述の予想 [Hirth and Beeler, 2015] に反する結果が得られた。2.剪断強度の有効圧力(封圧ー間隙流体圧)に対する依存関係に関しては、低温で線形の摩擦挙動から高温では依存性が無くなっていく形であり、間隙流体圧が大気圧の条件で行った過去の研究結果 [Shimamoto and Noda, 2014] と矛盾しない。1.に関しては、摩擦の凝着理論 [Bowden and Tabor, 1950] および真実接触近傍の個体部の変形の構成則が平均応力に寄らない事を仮定すれば理解できる。 石英・粘土混合物の圧力溶解クリープを素過程として含む摩擦の微物理モデルが近年報告された [den Hartog and Spiers, 2014]。そのモデルに乗っ取った速度・状態依存摩擦構成則を定式化し、これを用いて地震サイクルの数値計算を行った。 これら2件の研究は平成27年度中に国際誌に投稿、受理されすでに出版されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで主に使用していた広島大学のガス圧式高温高圧変形透水試験機が平成27年8月に故障し、使用できなくなった。急遽、産業技術総合研究所の高橋博士に協力を仰ぎ、そちらの試験機を使用した。当初案からの多少の計画の変更が必要となったが、結果として実験的研究において意義のあるデータが取得でき、国際誌への出版にこぎつける事ができた。それゆえ、おおむね順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は平成28年度より京都大学へ准教授として異動となり、教育・運営に関するエフォートが増加、外部へと実験の為に出張する事がこれまでよりも困難となった。また平成27年夏に故障した広島大学のガス圧試験機は現在メンテナンス中であり、本試験機を用いた実験を行う時間は削らざるを得ない。初年度に力を入れていた硅石粉末の固結時の挙動に関する実験は、試験機のメンテナンスが済み次第再開し、追加データの取得および論文への取りまとめを行う。 一方で、京都大学に眠っている高圧ねじり剪断試験機を使用できる事となった。本試験機は、粉末アナログ物質の剪断時の挙動を調べるのに適している。本試験機を京都大学において立ち上げ、固結度をコントロールしたサンプルでの摩擦実験を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度出版となった国際誌論文2編に関し、その受理となった時期が共に2月と年度末近くであった。それらの出版費用の正確な額がわからなかった。内1編に関しては年度内に支払いが完了したが、残り1編の請求が年度内に届かず、出版費用の概算分の額を年度中に使用できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
出版費用の請求書は平成28年度初めに手元に届いたため、その支払いにあてる。
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