2014 Fiscal Year Annual Research Report
基質強化した文化遺産建造物基材に対する地衣類の定着特性
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26882005
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
河崎 衣美 筑波大学, 芸術系, 研究員 (60732419)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 文化遺産建造物 / 地衣類 / 定着 / 基質強化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、屋外環境に曝される石造文化遺産に初期に付着する微生物のうち、初期対応の必要性が高いと考えられ、共生生物として生態が未解明な部分の多い地衣類に着目する。建造物基材とそれらに強化剤や撥水剤を適応した際の、文化遺産建造物におけるフィールド調査と同フィールドにおける基材の曝露試験を行う。これによって地衣類の建造物基材に対する初期定着挙動を明らかにすると共に石造文化遺産の修復材料を適応した際の初期定着挙動についても明らかにすることで定着のメカニズムを解明し、効果的な防除方法の開発に資するデータを得ることを目的とした。このために建造物基材の特性調査、文化遺産建造物の環境調査、文化遺産建造物における着生生物調査、同フィールドにおける基材の曝露試験によって初期定着挙動の評価を行うこととした。 平成26年度は、アンコール遺跡群バイヨン寺院を調査フィールドとし、バイヨン寺院の壁面を構成する石材にてクリーニング、強化、撥水の修復施工試験がすでに実施されており、その試験箇所について施工後の微生物の付着に関する経過観測を行った。施工箇所の周囲に分布し、施工箇所への付着が予測される微生物について可搬型マイクロスコープ等を用いた記録を行った。調査フィールドにおいて、温湿度ロガーを用いた環境計測を行い、建造物基材とそれらに文化遺産に用いられる強化剤や撥水剤を適応した際の物性や水に対する特性を把握した。微生物の定着挙動を明らかにするための評価方法の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、調査フィールドにおいてクリーニングと強化撥水処置後の経過観測および環境計測を継続している。また、フィールドにおける曝露試験の準備も整っており、いつでも着手できる状況であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、フィールド試験箇所における定期的なサンプリング調査を行い、モニタリングを継続する。また、可搬型マイクロスコープを用いて、フィールドにおける詳細な観察から着生地衣類などの着生初期状態を捉える。フィールド曝露試験では試験片における着生生物の染色や蛍光観察を行い、その分布等から定着の挙動を類推する。特に地衣類についてはその形態を観察すると同時に地衣成分の生産にも着目し、地衣化の経過を観測する。基材との相互作用の進行からの定着評価も試みる。
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