2014 Fiscal Year Annual Research Report
中国石窟芸術技法・材料の解明による美術史観再考‐麦積山石窟を事例として‐
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26882058
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
末森 薫 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 機関研究員 (90572511)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 中国仏教美術 / 文化財科学 / 非破壊分析調査 / 光学調査 / 技法・材料 / 麦積山石窟 / 敦煌莫高窟 / 国際研究者交流 中国甘粛省 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で用いる調査法のひとつである光学調査法について、紫外光・可視光狭帯域光源および各種の光学フィルターを用いた検証実験を行い、各条件による分光特性などの基礎データを取得した。そして、国立民族学博物館所蔵の資料および麦積山石窟の壁画片を対象として本手法を応用した調査を行った。その結果、狭帯域光源を用いた観察方法の有効性が確認できたと共に、可視光域における蛍光の可視化を行うことができた。 あわせて、麦積山石窟壁画片に対して、デジタル顕微鏡を用いた微細部観察、蛍光X線、X線回折による非破壊材質分析を実施した。その結果、光学調査の結果と比較するための基礎データが取得されたと共に、壁画の技法・材料に関する新たな知見が得られた。 また研究対象地である麦積山石窟および敦煌莫高窟にて、実地調査を行った。麦積山石窟では、現場に現存する壁画や塑像について現状調査を行い、その技法や材料について整理を行うと共に、現地研究者と今後の研究の展開について協議を行い、翌年度に実施する調査の候補を選定した。 敦煌莫高窟では、北朝期窟(5、6世紀)を対象に目視による調査を実施し、主に千仏図像の配色による規則性を明らかにし、窟内空間における同図像の機能について考察を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に予定した調査計画はおおむね順調に進展し、本研究で用いる調査法の基礎データを取得することができた。また翌年度に実施する研究の計画や内容についても大方決定しており、研究の進展は順調に推移していると考えられる。 現地調査に関しては、2014年11月と2015年3月の二回実施することを予定していたが、渡航研究対象地を管轄する組織の人事異動のため、後者については見送ることとした。現地で実施する調査の基礎実験にあてることができたため、研究の進捗には影響はない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、それぞれの研究項目について、一定の成果を得ることができた。これらについては、翌年度の学会(日本文化財科学会、文化財保存修復学会、東アジア文化遺産保護学会等)での発表を予定している。 また、基礎データを所得した光学調査法について、標準的な色料や膠着材を用いた検証実験を行うと共に、現場での活用に向けた応用的手法の開発を進める。そして、調査対象地である麦積山石窟において、壁画を対象として、本手法を活用した調査を実施する。 また敦煌莫高窟の北周窟、隋窟の千仏図像を対象として、その規則性の解釈を行い、それ以前の窟に見られる千仏図像との比較研究を行い、千仏図像から見た窟の編年研究を進める。
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Research Products
(3 results)