2014 Fiscal Year Annual Research Report
電荷移動型自己組織化単分子膜の開発と新奇機能性の創出
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26888018
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
山岸 正和 富山高等専門学校, 物質化学工学科, 助教 (20615827)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 自己組織化単分子膜 / 有機半導体 / 電荷移動 / 表面修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,トラップや接触抵抗の低減 および新奇機能性の創出を目的とし,異種接合界面に電荷移動型自己組織化単分子膜の導入を図 る。これにより,界面に存在する単分子膜からの電荷注入を行うため,素子特性の劇的な改善・ 変調が期待されるだけではなく,電荷移動と電界効果の協創する新奇な界面が構築され,新しい 伝導機構で動作するエレクトロニクス素子の開発を最終目的としている。 平成26年度は、最初の電荷移動型自己組織化単分子膜(CT型SAMs)の官能基としてテトラシアノキノジメタン(TCNQ)に焦点をあて誘導化を行った。SAM分子の合成には至っていないものの、参考文献に詳しい記述のない反応に関しても条件も確立し、TCNQ前駆体の合成は順調に行われている。また、水分量を制御するためにグローブボックスを用いて行われる溶液法を用いた自己組織化単分子膜の作製を、実験室系において再現性よく製膜する条件を確立した。現在は、官能基を基板上で反応させる条件の検討を始めている。さらに、ジフェニルアミノSAM分子の検討も行った。アミノ基を有するSAMsは分子内ダイポールによって電荷を注入するSAMsであるが、親水性のアミノ基を官能基としているため、基板表面への電荷伝導を阻害する水分子の吸着及び有機溶媒への低いぬれ性のための塗布法による有機半導体層の構築を困難にしていた。そこで末端基をジフェニルアミノ基とすることでこれらの問題を克服することに成功している。 研究室の立ち上げとしては、嫌気雰囲気下での合成を行うガスラインや自己組織化単分子膜(SAMs)による表面修飾を比較測定するための接触角計の導入を行い、上記の成果を上げることができた。まだ多少の不足はあるものの、一通りの合成実験及びSAMs製膜実験を行う環境はほぼ整ったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電荷移動型自己組織化単分子膜に関して、現段階でTCNQ前駆体の合成まで完了している。基板表面上での官能基導入に関しては現在検討中である。当初の予定では、平成26年度中にTCNQ-SAM分子の合成及び基板表面上の官能基導入の検討を行う予定であったが、申請者所属機関の嫌気雰囲気下合成やSAM製膜条件検討のための真空ラインにつかうポンプやガラス器具に不備があったため、その手配の必要があったため少し遅れていると評価している。しかし、その間にジフェニルアミノSAMsの実験を行い、予想以上の成果を得ており、現在論文を執筆中である。このことから、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。 さらに、遅れているTCNQ-SAM分子の合成であるが、合成環境がほぼ整ったことにより、平成27年度の早い段階で少しの不足器具を準備することで、SAM分子の合成が完了できる段階に至っている。申請者の以前所属していた機関との打ち合わせも完了しており、TCNQ-SAM分子の合成が完了すれば、すぐに装置を借りて特性評価を行えることになっている。他の電子吸引性官能基の合成に関しても、ほぼ文献調査を済ませており、合成を本格化させる段階にある。市販のSAM分子を用いて製膜条件を確立しているため、TCNQ-SAMsの特性評価及び他の官能基の誘導化の間に基板表面上での合成条件検討を始めている。各実験がこのような状態にあるため、申請書にある計画を遂行するには、少しの予定変更で対応できると考えられることからも、おおむね順調に進展していると自己評価するに至る。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、早い段階でTCNQ-SAMsの構築と実際のトランジスタに導入しての特性評価を行う。伝導を阻害するトラップの影響低減の他にも、メモリー現象も期待できるため併せて評価を行う。トランジスタ素子の作製及び測定に、必要な器具に関しては申請者の所属機関にはないため、以前所属していた研究室に借りて行えることになっている。他の電子吸引性官能基の誘導化に関しても、ほぼ文献調査を完了しており、合成を本格化させる。基板上でのSAMsテンプレートへの官能基導入に関しては現在検討中であるが、平成26年度中の文献調査で当初のルートよりも有望な合成ルートを見つけているので、そちらの検討も行う予定である。 TCNQ-SAMsの特性評価が最優先であると考えているが、電荷移動に関しては電子吸引性官能基の分子軌道レベルが大きな影響を与えるため、他の官能基の合成も不可欠である。また、様々な官能基をもつSAM分子を合成し、製膜条件をそのたび検討するよりも、SAMsテンプレートに直接導入することで、電荷移動型自己組織化単分子膜の研究が促進される。新しい研究として領域を確立するためには、基板表面の検討も進める必要がある。 成果の発信に関しては、現在論文を一報執筆中であるので、平成27年度の早い段階で発表する。また、電荷移動型自己組織化単分子膜の成果に関しては、今年度中に学会発表を行い、結果次第では特許申請を行う。また、最終的には学術論文として社会に発信する予定である。
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Research Products
(2 results)