2014 Fiscal Year Annual Research Report
SOIを用いた電力・遅延オーバヘッドの少ない耐ソフトエラーフリップフロップの提案
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26889037
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
古田 潤 京都工芸繊維大学, 学内共同利用施設等, 助教 (30735767)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | ソフトエラー / 完全空乏型トランジスタ / 中性子 / 重イオン / フリップフロップ |
Outline of Annual Research Achievements |
アルファ線と白色中性子線を照射することで加速試験を行い、28nmのFD-SOIプロセスのフリップフロップにおける一過性のエラーであるSingle Event Upset (SEU)の発生率を測定した。アルファ線による加速試験により、FD-SOIプロセスは65nmのバルクプロセスと比較してSEU発生率が低く、約1/300以下である。しかしフリップフロップの保持データ依存性が極めて強く、クロック信号と保持データが共に0の場合では他の条件と比較してSEU発生率が6倍以上高くなった。また、pMOSFETに逆方向の基板電位を印加した場合では更に10倍程度増加する 結果となった。 FD-SOIは非常に高いSEU耐性を持つ一方で、ある条件下ではそのエラー耐性が大きく低下することが判明した。そのため、基板電位や保持データによってエラー耐性が低下しないようにすることで、LSI全体のエラー耐性が大きく向上すると予想される。今後はエラー耐性が低下しないフリップフロップの構造の検討を行い、研究を進める予定である。 測定と同時にデバイスシミュレーションと回路シミュレーションを用いて28nm FD-SOIのSEU発生率を評価した。基板電位依存性ではエラー耐性が低下することを確認できたものの、保持データの依存性では大きな違いが生じなかった。現状ではシミュレーション上で考慮されていない影響が存在すると推測されるため、この原因を究明し、評価精度の向上を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はデバイスシミュレーションと中性子などの加速試験の結果を元にソフトエラー耐性の高いフリップフロップ構造を提案することである。本研究ではFD-SOIプロセスを評価対象としている。 26年度では28nm FD-SOIプロセスを用いて設計したテストチップに、中性子とアルファ線照射してソフトエラーの加速試験を行った。中性子線ではエラーが1つも発生せず、65nm バルクプロセスの100倍以上の耐性を持つことを確認した。一方でアルファ線では保持データや基板電位に対する依存性が強い結果となった。基板電位依存性は回路シミュレーションやデバイスシミュレーションでも確認した。 これらの結果から、特定の条件でもソフトエラー率が増加しないようにすることでフリップフロップ全体のソフトエラー率が大きく向上すると推測される。ソフトエラー耐性の高いフリップフロップ構造を検討する上で、極めて重要な知見を今年度の研究により取得することができた。またより詳細な依存性を検討するために、フリップフロップの構造を一部変更した3種類のフリップフロップを28nm FD-SOIプロセスを用いて設計を行った。このテストチップは27年度に測定を行う予定である。 今後はFD-SOIにおけるソフトエラーの特性や依存性を実測だけでなく、デバイスシミュレーションも用いてより詳細に評価する。その結果を元にソフトエラー耐性の高いフリップフロップの構造や、設計手法の提案を行なっていく。
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Strategy for Future Research Activity |
28nm FD-SOIプロセスでは一部の条件で6倍程度エラー率が上昇することが測定により判明した。一部の条件でエラー率が上昇する原因がデバイスシミュレーションを用いても再現できておらず、シミュレーションを用いたソフトエラー評価の精度が悪化している。ソフトエラー耐性の向上を達成するためにはこのエラー率が上昇する原因を取り除いたフリップフロップを提案する必要がある。また、ソフトエラー評価精度の向上の観点からもこの原因の特定は重要となる。 昨年度はエラー率が上昇する原因を検証するため、一部構造の異なるフリップフロップを3種類設計した。今年度はまずエラー率が増加する原因を設計したフリップフロップを実測することで確認する。測定結果とデバイスシミュレーションによる解析を元に高いエラー耐性を持つフリップフロップの構造の提案を行う。 また、同様の結果が重イオンでも生じるか、高いエネルギーを持つ重イオンでもFD-SOIが高いソフトエラー耐性を持つかを評価するために重イオンの照射実験を行う。重イオンの測定は高崎市の日本原子力研究所にて6月に行う予定である。重イオンを用いた測定ではアルファ線や中性子線よりも線エネルギー付与(LET:linear energy transfer)の値が大きいため、アルファ線や中性子では発生しなかった一過性のパルス状のノイズであるSET(Single Event Transient)の測定も期待できる。SETの測定結果を元にLETとパルス幅の関係、発生電荷量の関係を明らかにする。
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