2014 Fiscal Year Annual Research Report
I-131の摂取による高線量内部被ばく時の個人データに基づく線量評価手法の確立
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26893330
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
谷 幸太郎 独立行政法人放射線医学総合研究所, 緊急被ばく医療研究センター, 研究員 (40736071)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 内部被ばく / 甲状腺 / I-131 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子力事故後の緊急時作業では、平常時の線量限度を超えて被ばくする可能性がある。このような場合には、個人の体格や行動調査に基づいた詳細な線量評価が要求される。本研究では、甲状腺へ局所的に大線量を与えるおそれのあるI-131を対象として、緊急時作業後の線量再構築手法の確立を目指している。本年度は甲状腺周辺の組織厚を考慮した甲状腺残留量の評価手法に関して、以下の項目を実施した。 1.放射線検出器のモデル化とその検証:Ge半導体検出器をモデル化し、各種点線源(Ba-133, Cs-137, Am-241)に対する検出器応答を放射線輸送計算コードを使用して計算した。計算値を実験値と比較しながら、モデルを最適化した。最適化したモデルにおいて、甲状腺を模擬した物理ファントムに対する応答が、計算と実験で一致することを確認し、モデルの妥当性を評価した。 2.甲状腺周辺組織に対する検出器応答の依存性評価:甲状腺周辺の組織厚を変化させた日本人のボクセルファントムを作成し、I-131から放出される80.2, 284, 365, 637 keVの光子に対して、(組織厚)対(計数効率)の関係をグラフ化した。また、80.2, 365 keVの光子に対して、(計数効率比)対(組織厚)の関係をグラフ化した。 3.甲状腺残留量の評価手法の検討と福島事故後の緊急作業者への応用:福島第一原子力発電所事故後の甲状腺計測では、2名の緊急作業者から80.2, 365 keVの光子が両方検出された。2.の結果を使用し、これらの計数効率比から各作業者の組織厚を推定した。また、推定した組織厚に該当する計数効率を使用し、甲状腺残留量を評価した。組織厚を考慮した場合の甲状腺残留量は、考慮していない従来の評価と比較して0.93-1.9倍であり、組織厚が甲状腺残留量の評価に大きな影響を及ぼす要因のひとつであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、1.放射線検出器のモデル化とその検証、2.甲状腺周辺組織に対する検出器応答の依存性評価、3.甲状腺残留量の評価手法の検討と福島事故後の緊急作業者への応用、を目的としていた。予定通りにこれらを完了したため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、安定ヨウ素剤の服用を含む摂取シナリオに基づく線量再構築手法の検討として、以下の項目について実施する予定であり、特に大きな研究計画の変更はない。
1.安定ヨウ素剤服用時の体内動態モデルの開発 2.福島事故後の摂取シナリオに対する応用
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Research Products
(3 results)