1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60055022
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神野 博 京都大学, 工, 教授 (40025846)
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Keywords | ヘルシナイト / スピネル型構造 / メスバウアースペクトル / X線構造解析 |
Research Abstract |
酸化物セラミックス中の酸素は、本来、雰囲気の酸素分圧と平衡しなければならず、酸素分圧が低いときには、酸化物は原理的に不安定となる。そのため、極低酸素分圧下で強い照射にさらされたり、温度が高い場合には、イオン間の化学結合が切れ、物性に変化をきたし、使用が困難になることが予想される。極低酸素分圧下において、酸化物セラミックス中でおこる反応については、未知の部分が多く、セラミックスの幅広い応用のためには、これを解明する必要がある。 本研究では、鉄とアルミニウムの複合酸化物で、スピネル型の結晶構造を持つ、ヘルシナイト(Fe 【Al_2】 【O_4】)の、高温、極低酸素分圧下における安定性に関する知見を得ることを目的とした。 酸化第二鉄とα-アルミナを、正確に1:2のモル比に混合し、加圧成形後、酸素分圧が6.6×【10^(-6)】Paの雰囲気の電気炉で、1300℃、3時間焼成し、出発物質のヘルシナイトを得た。このヘルシナイトを、更に低い酸素分圧下に保持すると、スピネル相中の鉄イオンが金属鉄に還元され、スピネル格子から離脱した。同時に、スピネル相には欠陥が多数生成し、格子定数は大きく減少した。この、ヘルシナイトの分解過程においては、四面体サイトを占める鉄イオンが、八面体サイトを占める鉄イオンに比べ、多数離脱することを、メスバウアースペクトル、X線構造解析等により、明らかにした。【Fe^(2+)】は【Al^(3+)】に比べ、四面体サイトを優先するが、【Fe^(2+)】の方がイオン半径が大きいため、四面体サイトは広がった状態にある。ここで、格子定数が減少すると、四面体サイトは、もはやその大きさを維持できなくなるのに対し、八面体サイトは大きさをある程度保つことが可能である。そのため、格子定数の減少に伴い、四面体サイトを占める鉄イオンは、八面体サイトを占める鉄イオンに比べ不安定となり、スピネル格子からより多く離脱するものと考えられる。
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