1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60301007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 一美 東京大学, 文学部, 助教授 (60065480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯山 雅 国立音楽大学, 助教授 (00118895)
西村 清和 埼玉大学, 文学部, 助教授
戸澤 義夫 群馬県立女子大学, 助教授 (50011383)
増渕 宗一 日本女子大学, 文学部, 教授 (70060663)
佐々木 健一 東京大学, 文学部, 助教授 (80011328)
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Keywords | ポエーシス / 能動性 / 受動性 / 創造性 / 原因 / 存在と意味 / 世界観 / 人間化ナ |
Research Abstract |
本研究は従来の詩学研究を基礎に据えつつもそれのみではもはや捉えることのできない問題の拡がりを<ポイユーシス>の意味の再確認という視点より考察しようとするものであった. 60〜61年度において, ポイエーシスの問題は原因論的にも目的論的にも或いは作用論的にも予想外の展開を見せた. 本年度においては,とりわけ61年度の研究報告や議論からある程度予想されたことではあるが,一つの明らかな事態は,プラトンにおいて示された<存在化の原因としてのポイエーシス>という古典的な理念ーそれはまた広義の神の創造のミメーシスとしての人間的創造の理念を端的に示すものであったがーの妥当性への潜在的な批判が様々なかたちで現われてきたことである. それはある意味で,認識論上の,否かかる哲学上の言葉すら使用することのない<ものの見方の変更>という側面を強調するものである. 換言すればそれは何らかの<存在>を新しくつくる原因としてのポイエーシスから, 新しい<意味>ないし<パラダイム>の呈示による<もの>ないし<世界>の見方の変更としてのポイエーシスへの転換である. それはまた言換えれば, 局所的な変更において人間であることの証しを見出そうとする試みへの移行である. この事態の是非はともかくとして我々は言わば小さなデミウルブスの群居する時代に生き, 小さなデミウルブスは各々の自由においてパフォーマンスを享受していることを認めておかなくてはなるまい. 従ってポイェーシスと作品の理念も概念も古典的なそれを払拭したかの如き様相を呈している. 無論かかる歴史的現象の認容と哲学上の反省とは別である. 本来であれば,我々の言う<同一性と差異性>の弁証法的吟味が更に随行されねばならなかったが,同と異の錯綜を解きほぐすことは予想をこえて困灘であり, 再度の認識論的,存在論的, 価値論的な反省は別の機会をまつことにする. 但しそれは異化をこえる同化の模索となる.
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