1985 Fiscal Year Annual Research Report
微生物及び酵素によるリグニンの完全分解に関する研究
Project/Area Number |
60440015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
樋口 隆昌 京都大学, 木材研, 教授 (00027153)
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Keywords | リグニン / 白色腐朽菌 / リグニンペルオキシダーゼ / ラッカーゼ / 芳香核開裂 |
Research Abstract |
本年度の研究実積の概要は以下の通りである。 1.昨年度、本研究と関連してリグニン分解菌、Phanerochaete chry-sosporiumの培養菌体及び菌体外酵素によるリグニンサブストラグチャー間のCα-Cβ象裂、β-o-4結合のO-【C_4】開裂の機構を明らかにし、さらに培養菌呉による芳香核の開裂を見い出した。その後、前二者はリグニンペルオキシダーゼによって触媒されることが明らかにされた。 2.しかし、芳香核開裂反応を触媒する酵素は未だ不明である。今年度は新たにカワラタケによる芳香核開裂反応が見い出された。また、シリンギル核を有するβ-O-4二量体とグアヤシル核を有するそれとで、芳香核開裂生成物にちがいがみられ、アリールグリセロール-β-シリンギルエーテルはシリンギル核が開裂したアリールグリセロール-γ-ホルミルエステルを、またアリールグリセロール-β-グアイアシルエーテルはアリールグリセロール-β-γ-サイクリックカーボネートを生成することを初めて明らかにした。これらの結果は既にAppl Environ.Microbiol.(1985)に発表した。 3.従来、リグニン分解菌である白色腐朽菌のほとんどのものは、ラっカーゼを分泌し、ラッカーゼとリグニン分解に密接な関係があることが示唆されていた。そこで、種々のβ-1型二量体のカワラタケによる分解について検討した。その結果、従来見い出されていたアルキルフェニル間の開裂及び【C_α】位の酸化に加えて、側鎖【C_α】-【C_β】間の開裂がラッカーゼによってひきおこされることが初めて示された(第30回リグニン討論会にて発表)。現在さらに、リグニンペルオキシダーゼとラッカーゼの作用の比較と、リグニン分解における役割について【^(18)O】を用いて検討中である。 4.芳香核開裂反応を触媒する酸素を単離すべく実験中である。
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