1986 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物の中枢神経系におけるD-アミノ酸酸化酵素の生理的意義
Project/Area Number |
60580150
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
堀池 喜八郎 滋医大, 医学部, 助教授 (80089870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 哲夫 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (10176191)
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Keywords | D-アミノ酸 / D-アミノ酸酸化酵素 / フラビン酵素 / 中枢神経系 / 神経膠細胞 / ベルクマン膠細胞 / 星状膠細胞 / 共役過酸化法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、哺乳動物の中枢神経系でのD-アミノ酸酸化酵素の分布と生理的基質と考えられているチアゾリジン-2-カルボン酸(システアミンとグリオキシル酸との縮合物)との関係を調べ、神経解剖学と神経生化学の両面から本酵素の生理的意義の解明をめざすことである。本年度はまず昨年度に確立したニッケルを用いる鋭敏な共役過酸化法によって、ラット全脳での本酵素の神経解剖学的分布を、連続固定切片を用いて光学顕微鏡下に組織化学的に調べた。本酵素は終脳には全く分布せず、間脳にもほとんど活性はなく、脳幹および脊髄のみに限局していた。その細胞はベルクマン膠細胞を含む星状膠細胞であり、ニューロン成分には本酵素は全く存在しなかった。また、小脳に関しては電子顕微鏡による詳細な観察も行った。すなわち、分子層ではプルキンエ細胞の樹状突起と平行線維とのシナプスの周囲のベルクマン膠細胞の突起に強い活性を認めた。また、ゴルジ細胞の樹状突起への各種ニューロンの終末の周囲の膠細胞にも本酵素は分布していた。プルキンエ細胞層では、プルキンエ細胞の細胞体やその軸索の反回側副枝の終末および籠細胞の軸索やその終末を取り囲むベルクマン膠細胞の突起に本酵素活性を認めた。顆粒層では、小脳糸球を取り囲む星状膠細胞の突起に本酵素は分布し、特に小脳糸球中のゴルジ細胞の終末の外側にしばしば強い活性を認めた。これらの事実は上述の各種シナプスを機能の点において隔離区画化する役割を本酵素が担っている可能性を示唆している。上記以外にシステアミンやその類縁化合物の代謝調節作用および薬理作用の研究も行い、興味ある結果が得られている。また、本酵素の活性発現にはフラビン(補酵素)が必須であるが、フラビンは自己会合系として存在し、血管から脳への輸送過程やアポ酵素への結合過程の解析においてこのリガンドの会合現象は重要であり、このような系の理論的解析も行った。
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[Publications] Hiromasa Tojo: J.Biol.Chem.260. 412607-1261 (1985)
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[Publications] Hiromasa Tojo: J.Biol.Chem.260. 12615-12621 (1985)
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[Publications] Kihachiro Horiike: Acta Histochem.Cytochem.18. 539-550 (1985)
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[Publications] Kihachiro Horiike: Brain Res.Bull.(1987)
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[Publications] Tetsuo Ishida: J.Theor.Biol.(1987)
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[Publications] Hideyuki Fujioka: Life Science. (1987)