1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60580190
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山口 守人 熊本大, 文学部, 教授 (30015581)
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Keywords | 過疎 / 山村 / 企業的育成林業 / 生業的育成林業 / 焼畑 / 活性化 / 土壌発達 / 村落の社会経済構造 / 入会林野 / 林業経営協業体 |
Research Abstract |
本研究では、焼畑農業を「近代的農業(ヨーロッパ農業)」との対照的な位置にある「伝統的農業」の範畴で把えながらも、同時に社会経済的組織の変容とともにその性格を換えるものとして設定してある。それゆえ、初年度の昨年は、この設定の正当性を論証するために、研究対象地域である熊本県球磨郡五木村の明治20年代から現代に至るまでの村域全体に亘る土地利用の変遷を把握した。この結果、市場原理に対応した新たな土地利用形態としての育成林地造成が、自立的な村落であった「小字 の経済基礎を脆弱なものにさせた反面、閉鎖的な社会構造を開放的な方向に導いていることが明らかになったほか、焼畑自体も自給自足的なものから、商品生産的なものに変容してきていることも明らかになった。今年度は、これらの成果を踏まえ、従来から「出損入損 といわれてきた入会林野の慣行と、当該林野利用の活性化との関係について、例示研究(サンプル地区としては小字「栗鶴 を行った。82haの入会林野は、13名の入会権者によって、公団造林40ha、栗園11ha、竹林1ha、雑木林30ha(逐次造林して行く計画)の利用状況を呈しているが、2つの点で隘路が生じてきていることが明らかになった。1つは、「働く場 の創造を意図して作られた栗園造成や拡大造林が管理運営面の性格の曖昧さから、生産組織としての効用が発揮されず、旧慣行的運営のために「賃金を得る働く場 になっていないということである。さらに1つは、山村経営の根幹を単一経営的な性格にするか、複合経営的なものにするかの相克であり、地域資源の活用姿勢をめぐる問題でもある。このような住民相互の意識上の乖離が過疎的山村の活性化に大きな障害になっていることは驚きでもあった。明年度は、価値観の多様化から生じ始めた地域資源の活用が、「いわゆる粗放性のもつ効率性を活かした土地利用 として、山地生態に染むものであることを論証したい。
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