1986 Fiscal Year Annual Research Report
赤痢菌の細胞侵入にかかわるプラスミド遺伝子の構造と機能
Project/Area Number |
61440035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 昌之介 東大, 医科学研究所, 教授 (80012714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 壮一 東京大学, 医科学研究所, 助手 (30181621)
笹川 千尋 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (70114494)
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Keywords | 赤痢菌 / 細胞侵入 / 病原性 / ビルレンズ / 下痢 / プラスミド / 組換えDNA実験 / 遺伝子解析 |
Research Abstract |
赤痢菌の病原性遺伝子は染色体上に少なくとも3ヶ所,また230Kbプラスミド上には細胞侵入に必須な遺伝子が存在する。赤痢菌をはじめとする侵入性病原菌は、菌と細胞表層の相互作用により何らかの機構で菌が細胞へ侵入し、これが感染成立にとって不可欠なステップとなる。そこで赤痢菌の細胞侵入機構を明らかにする目的で、230Kbプラスミド上の病原性遺伝子の分子遺伝学的解析を試みた。前年度までに作製した30.4株のTn【5!_】挿入病原性喪失変異株を用いて、(1)Tn【5!_】挿入部位の決定、(2)Tn【5!_】挿入病原性喪失部位を含む各種制限酵素断片の病原性回復能の試験、を行ない以下の結果を得た。(1)230Kbプラスミド上には少なくとも13ヶ所の病原性にかかわる遺伝子領域が存在すること、(2)その中の1つ、VirGと称する領域は隣接細胞再感染に必要なこと、(3)細胞侵入に直接かかわる遺伝子領域の1つ【virF!_】遺伝子の蛋白、全塩基配列、アミノ酸一次配列、転写の方向を結定し、(3)230Kbプラスミド上の各病原性遺伝子領域の大きさと相互の配列を明らかにした。一方これらの遺伝子の役割を明らかにし赤痢菌の動態を簡便に解析する目的で、96穴マイクロタイターにサル腎上皮細胞を単層培養したものをつくり、これに菌を感染させ経時的に感染後の培養細胞の変化を調べる系を確立した。さらに本研究で解析した種々病原性喪失変異赤痢菌を用いこの系の有効性を検証し、また多数の野外分離赤痢菌や腸管組織侵入性大腸菌の細胞内感染能を迅速に調べる目的にも著るしく有用なことを示した。現在230Kbプラスミド上の各病原性遺伝子領域を各々含むDNA断片をベクターヘクローニングしその遺伝子産物をミニセル法で解析している。したがって230Kbプラスミド上の病原性遺伝子の構造とその産物、そして本研究にて得られた培養細胞内感染実験系を組み合わせ、赤痢菌の細胞表層と上皮細胞の相互作用と侵入機構を次年度以降明らかにする予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Chihiro Sasakawa: Infection ε Immunity. 54. 32-36 (1986)
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[Publications] Souich Makino: Cell. 46. 551-555 (1986)
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[Publications] Takashi Sakai: Infection ε Immunity. 54. 395-402 (1986)
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[Publications] Masanosuke Yoshikawa: Protein-Carbohydrate Interactions,Academic Press(London). 387-388 (1986)
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[Publications] Souichi Makino: Mol.Gen.Genet.204. 115-119 (1986)
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[Publications] Hisashi Yoshmoto: Biochem.Biophys.Res.Commun.139. 918-925 (1986)