1986 Fiscal Year Annual Research Report
老人脳および痴呆脳に沈着する異常物質の本態と成因の解明
Project/Area Number |
61440041
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
朝長 正徳 東大, 医学部, 教授 (10072977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村山 繁雄 東京大学, 医学部, 助手 (50183653)
池田 和彦 東京大学, 医学部, 助手 (30124663)
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Keywords | アルツハイマー病 / アルツハイマー原線維変化 / PHF / 老人斑 / アミロイド / 免疫組織化学 / 超微形態 / タウ蛋白 |
Research Abstract |
本研究の目的は老人脳に沈着し、その出現と痴呆とが密接な関係があるところの、アルツハイマー原線維変化および老人斑の本体と出現機序、さらにそれによる脳の代謝破綻へのプロセスを超微形態、免疫組織化学、生化学的手法および培養神経細胞を用いて解明することにある。今年度の知見は以下のとうりである。 1.研究方法:アルツハイマー病(AD)で死亡した患者の剖検脳およびマウス神経節、ラット脳、ヒト脳腫瘍由来の細胞株を用いた。(1)電顕的観察は大脳皮質の固定包埋材料のほか、Ihara&Selkoe(1982)の方法により分離した材料のnegative stainingによった。一部急速凍結法を応用した。(2)抗PHF抗体を用いて脳ホモジネート中のPHF前駆体(SDS可溶)を固定した。(3)アミロイド・アンギオパチーのアミロイドであるベータ蛋白の合成ペプチドの抗体を作製し、免疫組織化学的にAD脳を調べた。 2.結果:(1)アルツハイマー原線維変化を構成するPHFは電顕的に必ずしもtwistしたものだけでなく、straightの15nm線維との混在・移行がみられ、またneurofilamentとの関連もあり、その構造はかなり複雑で、既存の線維蛋白以外の新しい蛋白質の関与の可能性が示唆された。(2)ベータ蛋白の合成ペプチド抗体はAD脳の血管および老人斑のアミロイドに反応したが、PHFには反応しなかった。(3)PHFの抗体は胎児脳のリン酸化されたtau蛋白と共通抗原を有する。(4)リン酸化されたtau蛋白の抗体はAD脳のneuropilを染めた。以上より老人斑は血管由来のアミロイド沈着と関係した形成され、その前駆蛋白の検索が必要である。アルツハイマー原線維変化は主としてPHFよりなり、細胞骨格蛋白が変化したものと思われる。今後、PHFの実験的作製,AD脳に含まれる発現因子の探索を行う予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 朝長正徳: 神経研究の進歩. 30. 1091-1100 (1986)
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[Publications] 池田和彦: 医学のあゆみ. 137. 563-564 (1986)
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[Publications] 池田和彦: 医学のあゆみ. 139. 131-132 (1986)
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[Publications] Tomonaga,M.: Neuropatnology. suppl.3. 23-35 (1986)
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[Publications] Mori,H.: Acta Neuropathol.71. 344-346 (1986)
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[Publications] 金丸和富: 医学のあゆみ. 139. 841-842 (1986)
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[Publications] 朝長正徳: "痴呆を考える" 講談社サイエンティフィク, (1987)