1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61560221
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
山森 邦夫 北里大, 水産学部, 助教授 (80012029)
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Keywords | テトロドトキシン / サキシトキシン / 味覚 / 魚類 / ニジマス / イワナ / ヤマメ / 忌避行動 |
Research Abstract |
テトロドキシン(TTX)やサキシトキシン(STX)は強力な神経毒であるが、ヒトにとっては無味・無臭であるといわれている。一方、カナダ産のニジマスやキョクイワナの味覚器はTTXやSTXに応答し、しかも両毒に対する応答性は両魚種が近縁であるにもかかわらず、かなり異なる。このことは、魚類が餌料中の毒を味覚によって感知可能であり、しかもその感知能力は魚種によってかなり異なることを示唆している。そこで上記2魚種と比較するため、日本のニジマス,イワナ,ヤマメ各味覚器のTTX,STXに対する応答性を調べた。また両毒の魚毒性や両毒を含有する餌料に対するこれらの魚種の摂餌行動を調べ、味覚との関連性を検討した。成果は以下の通りである。1.ニジマス,イワナ,ヤマメの味覚器はTTXに応答した。TTXに対する応答閾濃度はイワナが最も低く(【10^(-7)】M)、ついでヤマメ,ニジマスの順であった。上記3魚種の味覚器はSTXにも応答したが、各魚種ともTTXの場合に比較して応答は小さく、また応答閾濃度も高かった。2.上記3魚種ともTTX含有餌料を忌避した。半数が忌避する餌料中のTTX濃度は、応答閾濃度の約100倍に相当し、イワナで最も低く(【10^(-5)】)M)、ついでヤマメ,ニジマスの順であった。一方、上記3魚種は、【10^(-4)】M以下の濃度のSTXを含む餌料を忌避しなかった。3.経口投与時の半数致死毒量はTTXの場合は、イワナ,ヤマメでは100Mu/20g前後、ニジマスでは300〜600Mu/20gと異なり、STXの場合は、3魚種とも150Mu/20g以上であったが、決定まで至らなかった。4.以上のことから毒に対する味覚閾値と忌避行動との間には関連のあることが示唆された。そして毒に対する味覚閾値が低い魚種は、低い濃度の毒から忌避行動を示し、毒に対する低抗性の高い魚種はより高い濃度の毒から忌避行動を示す傾向がみられた。
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