1988 Fiscal Year Annual Research Report
mtDNAの変異を標識としたサケ科魚類の遺伝資源学的研究
Project/Area Number |
62440016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沼知 健一 東京大学, 海洋研究所・資源解析部門, 教授 (30013569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 敬典 東京大学, 海洋研究所・資源解析部門, 助手 (70205467)
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Keywords | mtDNA / 切断型 / サケ科魚類 / 遺伝資源 / 集団遺伝学 |
Research Abstract |
従来、mtDNAの分離抽出を効率良く行うためには生鮮な組織を用いる必要があった。しかし、実際には対象とする魚種が入手されるのは実験室から遠く離れた場所であることが多く、材料の処理に問題があったので昨年度開発したmtDNA分離法に加えて、試料の処理、輸送保存法を検討した。その結果、組織を生理食塩水や緩衝液に入れた場合には約10時間で収量が低下するのに対し、組織をポリエチレンバッグに入れ、氷水で直接冷却したものは72時間〜90時間程度でも生鮮と同程度の収量が得られることが判った。凍結試料からミトコンドリアを分離するにはホモジェナイズに生鮮組織で成積がよい0.25Mしょ糖液を用いると収量が著しく低下する。TEK(TrisーEDTAーKcl)緩衝液を用いてホモジェナイズし、20%のしょ糖液をホモジェネート下部に重層して遠心することによりミトコンドリアの収量を上げることができた。 北海道4河川に産卵遡上したサクラマスと道立ふ化場森支場で継代飼育されたサクラマスからmtDNAを抽出した。このうち2河川と森支場のサクラマスについて、10種類の6塩基対認識の制限酵素で切断し、アガロースゲル中で泳動した結果、7種類の酵素に変異を検出した。その結果7酵素の切断型に計18種類の変異があり、その組合せで生ずるB型のゲノム型が検出された。3集団に検出されたゲノム型は各集団に固有で集団間の重複は見られなかった。これは既報の東北太平洋岸のサクラマスのmtDNA分析結果とよく一致する(沼知・小林1988)。既報と合わせるとサクラマスmtDNAゲノム型は計34型にも達しきわめて多様性に豊むことになる。サクラマスのゲノム型から推定する限りサクラマスは河川集団ごとに特異的なゲノム型を持って分化していることが明らかになりmtDNAが個体や集団を判別する遺伝的標識として、また標識放流の効果や遺伝的組成の変化を知る標識として極めて有力であることが示された。
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