1988 Fiscal Year Annual Research Report
九官鳥を用いた難聴児の発語機構に関する実験的研究ー聴覚フィードバックの効果ー
Project/Area Number |
62450018
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮本 健作 大阪大学, 人間科学部, 教授 (90049148)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 誠 仏教大学, 文学部, 教授 (70026681)
山田 恒夫 大阪大学, 人間科学部, 助手 (70182540)
吉田 光雄 大阪大学, 人間科学部, 教授 (10028334)
|
Keywords | 九官鳥 / 模倣発声行動 / 聴覚フィードバック / 騒音性難聴 / オペラント発声行動 / 模倣動機づけ要因 / 行動聴力曲線 / 脳幹聴覚誘発電位 |
Research Abstract |
1.喃語様発声と負の強化:九官鳥の幼鳥がヒトのことばを模倣学習する過程で出現する喃語様発声(模倣原音)に対して大きな拍手音または叱声を与えると、その発声回数は徐々に減少し、結局模倣は完成しない。一方、トリの発声ごとに愛称を呼ぶか餌を与えるかすると、模倣原音は加連的に増加し、物まねの完成が促進される。この成績は幼児の言語習得に関する貴重な教訓を示唆する。2.実験的騒音性難聴の形成:九官鳥は騒音負荷に対する受傷耐性が著しく高く、哺乳類では騒音負荷の有効刺激としてよく知られた高音圧のホワイトノイズまたは純音はまったく効果はみられなかった。種々試みに結果、閉鎖空間における陸上競技用ピストル音の暴露によって一過性の騒音性難聴が認められた。3.聴力損失の指標:動物の頭皮上ならびに内耳前症窓近傍から記録した脳幹聴覚誘発電位(BAEP)および蝸牛神経複合活動電位(AP)は一過性騒音難聴の形成とその回復過程を知る客観的指標としてきわめて有効であることを確認した。4.騒音性難聴条件下の模倣発声:爆発音負荷直後、BAEPおよびAP波形が消失してから振幅が完全に回復するまでの10日間における発声行動の音圧および発声持続時間などにはとくに顕著な変化は認められなかった。難聴児にみられる聴覚フィードバックの障害効果と著しく異なった。5.模倣発声行動の動機づけ要因:飼育者の音声のようにある種の社会的意味をもつと考えられる音声は物まね発声を誘発させる効果があること、さらに飼育者の音声が感覚性強化刺激になることが明らかになった。6.弁別オペラント行動からみた九官鳥の聴力曲線:行動聴力曲線は他種のトリに比べ、ゆるやかなカーブを描き、可聴範囲は110H_2から12kH_2までの幅広い周波数帯域を含むことが認められた。 騒音性難聴が模倣発声に及ぼす効果の有無については今後の検討課題であるが、ヒトと異なり、強大音に対する受傷耐性が著しく高い。
|
Research Products
(11 results)
-
[Publications] 宮本健作 他: 日本心理学会第50回大会発表論文集. 276 (1986)
-
[Publications] 宮本健作 他: 生理心理. 第5巻. 93-105 (1987)
-
[Publications] 宮本健作 他: 日本気管食道科会会報. 第39巻. 438-443 (1988)
-
[Publications] 山田恒夫 他: 第11回大阪大学BME研究会コロキアム講演論文集. 7-12 (1988)
-
[Publications] 宮本健作 他: 大阪大学人間科学部紀要. 第15巻. 149-188 (1988)
-
[Publications] 宮本健作 他: 昭和63年度科学研究費補助金(一般研究B)研究成果報告書(研究課題番号:62450018). (1989)
-
[Publications] 山田恒夫 他: 昭和63年度科学研究費補助金(一般研究B)研究成果報告書(研究課題番号:62450018). (1989)
-
[Publications] 山田恒夫 他: 昭和63年度科学研究費補助金(一般研究B)研究成果報告書(研究課題番号:62450018). (1989)
-
[Publications] 宇野宏幸 他: 昭和63年度科学研究費補助金(一般研究B)研究成果報告書(研究課題番号:62450018). (1989)
-
[Publications] 大野弓子 他: 昭和63年度科学研究費補助金(一般研究B)研究成果報告書(研究課題番号:62450018). (1989)
-
[Publications] 三宅進・宮本健作 編著: "心理学ウォッチングー学びのメカニズムー" ブレーン出版, 3-242 (1988)