Research Abstract |
1.技術的には, 以下の二つの点で成果をあげた. (1)アデノシン・デアミネース(DA), S-adenosyl nomocysteinase(SAH), アデノシン(Ad)に対する特異的な抗血清を作製した. (2)抗Ad抗体を用いて免疫組織化学によりラット脳を染色すると, Ad含有ニューロンに比べ, Ad含有終末の可視化が困難であったが, 動物の灌流法・固定法の改善により(固定液の注入前に, 5%carbodiimide液で灌流する)陽性終末が観察できるようになった. 2.以上の成果をふまえて, 以下の三つの領域で, Ad作動性システムの検討を行なった. (1)ラット網膜において, Ad, SAH, ADH(免疫組織化学)5′-nuclestidase(組織化学)の分布を明らかにし, 網膜各層・各細胞におけるAdの代謝とその機能について検討した. Adを最も高濃度に含むのは神経節細胞で, これらが上丘など中枢神経系に投射すると考えられる. 一方, ADA含有細胞は, 同じ神経節細胞層にあるが, これらはdisplaced amacrine cellである. (2)上丘表層には, ADAを高濃度に含む細胞が多数観察され, これらはsubstane PやCGRPなどのペプチドを含む細胞群とは明確に異なる細胞群を形成し, 視床の東京都外側核に当社する. 現在, 上丘において網膜由来の終末とADA含有細胞との関係について電顕的観察を行なっている. (3)後根神経節においては, ADA含有細胞は小型で後角表層に投射するが, Ad含有細胞は中〜大型で, 後索を上行し後索核に至る. 後角表層にもAdに陽性を示す線維, 終末が分布するが, これらは後索を上行する線維の側枝である可能性が高い. vibrationによる鎮痛作用にAdが関与することが報告されており, その形態学的照明のため, 現在, 後角のAdを高濃度を含む細胞と, ADA含有細胞とは必ずしも一致せず, 神経系のAdの伝達・代謝機構については, 更に詳細な検討が必要である.
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