Research Abstract |
胃癌腹水の2例, 結腸癌原発巣4例の染色体分析を終了した. 胃癌腹膜播種の2例はいずれも手術不能stage IV, 腹水を材料にbuffy coatを1日培養した. 第1例は, 染色体数のモードは49で, 7, 8, 11, 17番染色体の過剰と16, 18番染色体の欠失, 1q42, 6q13, 8cen, 9q22, 17p?11に切断点をもつ構造異常がみられた. 第2例の染色体数のモードは52で, 2, 5, 6, 8, 18, 20番染色体の過剰と1q34, 9q24に切断点をもつ構造異常がみられた. これらの結果をこれまでの報告と比較すると, 1q34, 6q-, +8, i(Bq), 9q24などの異常か胃癌に特異的にみられる可能性が示唆された. 大腸癌4例はいずれも組織型は高分化腺癌であった. 染色体数のモードは高3倍体〜低4倍体域であった. 複数の分裂像を分析し得た2例では, 染色体数のモードは71〜73および83〜91にあった. 各分裂細胞における染色体異常は多様であり, いわゆるkaryotypic instabilityがみられたが, 共通する数的異常や構造異常がみられることからstem lineの存在が示された. 症例3と4では染色体数の判定できた分裂細胞数はそれぞれ1個のみで, いずれも高2倍体であった. これらの結果から今回の結腸癌症例における染色体分析の結果ではprimary changeと特定できるような染色体異常は認められなかった. しかし, 1p-, 1p+, 17p+などの構造異常が複数例に認められており, これらの染色体異常が大腸癌の発生や進展に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された.
|