Research Abstract |
チエルノブイリ原発事故は世界的な規模の放射能汚染をもたらし, その放射性降下物の影響は時間と地域などによって変動すると思われる. (1)雨水, 落下塵埃および浮遊塵埃などの環境放射能調査:東大阪地区においては空気中の浮遊塵埃には昭和61年5月4日に影響が現われた. 検出された核種はI-131, Cs-137, Cs-134, Ru-103, Ru-106, Mo-99, La-140, I-132などであった. 約1ケ月後にはいずれの核種についても検出限界値付近の値を示した. 事故後1年における浮遊塵は今回購入した大容量エアサンプラーで吸引し, 大量に集めた空気試料について放射能を測定したが, 月間雨水および落下塵埃についても長半減期放射性核種の降下は認められなかった. (2)琵琶湖生態圏における放射性核種の動的変化:日本列島のほぼ中央部に位置する琵琶湖を中心に事故1年後の放射能分析を実施した. 湖水中の放射性核種の経時変動は琵琶湖大橋下, 水深1mにおける表層水について調べ, 1ケ月後にはI-131, Ru-103, Ru-106, Cs-134, Cs-137などが検出され, 0.37mBq/lとほぼ検出限界の濃度となりその後1年間平衡状態を示した. 生物は半年後において, Cs-134, Cs-137, Ag-110mが検出され, Cs-137濃度はブラックバスの肉部で最高値2.0Bq/kgを示し, 半年後には70%, 1年後には50%となっている. 湖水中のCs-137に対する放射能比は大きく, 特にブラックバス, モロコにその濃縮は顕著であった. 湖泥中のCs-137濃度は1年後において, 表層より10cmでもっとも濃度は高く, 19Bq/kgとなり, 20cm以下では検出限界以下であった. これら昭和62年度の調査の結果, 事故1年後における放射性物質の降下は全く認められなかったが, 琵琶湖生態圏における放射性物質の蓄積, 濃縮は大きく, 特にブラックバス, モロコにその影響は顕著に現われた.
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