1988 Fiscal Year Annual Research Report
チェルノブイリから降ってきた琵琶湖の放射能-日本本土全域のよき代表値-
Project/Area Number |
62580168
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
森嶋 彌重 近畿大学, 原子力研究所, 助教授 (80088418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 哲夫 近畿大学, 原子力研究所, 講師 (10140352)
古賀 妙子 近畿大学, 原子力研究所, 助教授 (20088420)
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Keywords | チェルノブイリ原発事故 / 琵琶湖生態圏 / γ線エネルギースペクトル / 放射性降下物 / CS-137 / 湖泥 / Ge半導体検出器 / 深度分布 |
Research Abstract |
チェルノブイリ原発事故後、約2年を経過した。その間、琵琶湖を中心とした環境における放射性セシウムの挙動について調べ、経時変化も報告する。試料は湖水、湖泥および生物などを大橋下付近で採取した。湖泥は草津、大橋下および志那の3点について、CS-137の深度分布は、事故1年後で表層土より10〜20cmで最高値を示し、その値は土性の違いにより変動し、草津は粘土成分が他の2ケ所の約2倍となり、濃度も高くなっている。湖水中に検出された放射性核種は半年後以降ではCS-137のみとなり、その濃度は0.4mBq/l以下で、事故1ケ月後の1/10以下に減少している。チェルノブイリ原発事故に由来するCS-137/CS-134同位体比は約2を示し、これを基に計算すると事故以前の核実験などによるCS-137の影響は0.27mBq/lとなり、2年を経過した現在、事故以前の濃度に減少した。1988年6月に採取した生物中の放射性核種は自然放射性核種以外CS-137およびCS-134のみとなり、その濃度がもっとも高かったのはブラックバスの肉部で、生物中のCS-137は0.4〜1.1Bq/kg、骨部への分布は少なく、ブラックバス以外では検出限界以下であった。事故半年後のブラックバスの肉部のCS-137は2.0Bq/kg、1年後には70%、2年後には1.1Bq/kgと約50%に減少した。CS-134は核分裂生成核種の1つであるCS-133の(n,γ)反応で生成されるが、フナ、ブラックバスの肉部には0.1〜0.2Bq/kg検出され、肉部への蓄積が見られたが、湖泥への沈着は少なかった。これによると湖泥中のCS-137はチェルノブイリ以前の降下物による影響が大きいと思われる。 ハンガリーブタペスト(チェルノブイリから1000km)で採取した土壌のCS-137濃度は246Bq/kg、地上への降下量は6.7KBq/m^2と推測され、8000km離れた大阪へのCS-137の降下量はブタペストの降下量の約1/50を示した。
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