1988 Fiscal Year Annual Research Report
壱岐島における散居集落の土地利用と空間構造に関する研究
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63450090
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加藤 仁美 九州大学, 工学部, 助手 (80037936)
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Keywords | 壱岐島 / 散居集落 / 地割制度 / 触 / 講中 / 隠居制 / 壱岐型土地利用パターン / 背戸山 / 前畑 |
Research Abstract |
壱岐島には全国でも珍らしい散居集落が全島規模で現存しており、集落研究の上でも地域計画の上でも興味深い事例である。これは藩政期に平戸藩で実施された地割制度と関係があると言われている。 壱岐島の散居集落の特徴は、(1)触と浦の二元構成、(2)土地利用パターンの定型、(3)触・講中・隠居制等からなる社会構造、(4)地割制度との関連、(5)風水設との類似、等指適出来る。 本年度は主に土地利用のフィジカルな特性に焦点をあて、郷ノ浦町の牛方触、渡良西触、志原南触の3つの集落を対象に調査研究を行ない、次のような成果を得た。 (1) 触と浦の二元構成:触は自然村に相当する農業集落であり、漁業集落とその発展型である市街地とはっきり区別され、農業に特化して開墾と勤農策が計られた。今日も"壱岐八浦・壱岐百触"が継承されている。 (2) 壱岐型土地利用パターン:マクロな土地利用の特徴は、地目構成の上では森林率が低く開墾による農地率が高いことである。形態の上では散居パターンである、宅用廻りの土地利用に定型があり、これを壱岐型土地利用と命名した。即ち、冬期の強い北西の季節風を防ぐため、背戸山が発達し、背戸山ー住居群ー前畑ー田圃というワンセットの土地利用パターンが概ね南斜面を選んで散在している。屋敷面積は約50a、宅地10a、背戸山15a、前畑20〜25aが平均値で、母屋、隠居屋、釜屋、牛舎等5〜6棟/戸立地している。田畑は割替制度の影響で分散所有である。 (3) 講中と触:講中は今日も日常的社会単位として継承されており、多様な行事や相互扶助がみられる。散居疎住をソフトな面で支援する強固な社会的紐帯として機能してきたと解釈できる。1講中5〜10戸である。 今後は調査事例をふやしつつ、地割制度・風水説との関連、他の散居集落との比較等を通して壱岐島の散居集落の固有性と課題を追求したい。
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Research Products
(2 results)