1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63480003
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
宮田 隆 九州大学, 理学部, 助教授 (20022692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 重樹 東北大学, 農学部, 教授 (90112903)
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Keywords | 突然変異率 / DNA複製 / エラ- / 常染色体 / 性染色体 / 精子 / 分子進化速度 |
Research Abstract |
一般に進化に寄与する突然変異の主要因はDNAの複製の際に生じるエラ-であると考えられている。もし、この仮定が正しければ、一般にオスの生殖細胞の分裂数がメスのそれ(前者の後者に対する比をαとする)よりずっと大きいと考えられているので、進化に寄与する突然変異の大部分はオスに由来する、という重要な結論へと導く。本研究は、このことを明らかにすることを目的として行われた。オスとメスの生殖細胞の分裂数に差があると、突然変異率が染色体間で異なることを理論的に導いた。すなわち、α>>1の場合、XX/XY型では突然変異率の比は、常染色体:Z染色体:Y染色体=1:2/3:2となる。興味あることに鳥類などのZW/ZZ型ではこの比がXX/XY型と比べて逆転することが示される:常染色体:Z染色体:W染色体=1:4/3:0(1/α)(0(1/α)は非常に小さな値)である。ここでXはZに、YはWに対応する。すなわち上記の仮定から、常染色体に対するX及びYの相対突然変異率(それぞれR_X、R_Yと書く)が哺乳類と鳥類で逆転する。この理論的結果を確認するために塩基配列の比較が行われた。遺伝子ごとにヒトとマウス(あるいはラット)の間で塩基配列を比較し、機能的制約がほとんど働いていない同義座位の置換率K_Sを求めた。本年度は、最近発表されたX染色体遺伝子の塩基配列を使って解析を追加した。これまでの解析結果を含めると、X及びY染色体遺伝子の相対進化速度(R′_X、R′_Y)はそれぞれR′_X=0.58、R′_Y=2.2となり、理論的期待値R_X=2/3、R_Y=2に非常に近い値が得られた。また、塩基含量による進化速度の影響も調べたが上記の結果を変えるほどの影響は認められなかった。従って、進化に寄与する突然変異はオスに支配される、との結論を確認した。鳥類のZ及びW染色体遺伝子のクロ-ニングも試みたが、困難をきわめ、本研究期間中には成功しなかった。今後も引続き続行する。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Miyata,T.: "Different rates of evolution of autosome-,X chromosome-and Y chromosome-liked genes:Hypothesis of male-driven molecular evolution." In:Population Biology of Genes and Molecules(eds.Takahata,N.& Crow,J.F.). 341-357 (1990)
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[Publications] Iwabe,N.: "Evolutionary relationship of archaebacteria,eubacteria and eukaryotes inferred from phylogenetic tree of duplicated genes." Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 86. 9355-9359 (1989)
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[Publications] Iwabe,N.: "Evolution of rhodopsin supergene family:-Independent divergence of visual pigments in vertebrates and insects and possibly in mollusks." Proc.Japan Acad.65B. 195-198 (1989)
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[Publications] Kishino,H.: "Maximum likelihood inference of protein phylogeny,and the origin of chloroplasts." J.Mol.Evol.(1990)
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[Publications] 宮田隆: "進化は雄で決まるか" 科学(岩波書店). 59. 137-144 (1989)