1988 Fiscal Year Annual Research Report
レーガン政権下における連邦補助金制度の改革とその背景についての研究
Project/Area Number |
63530054
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
岡本 英男 東北学院大学, 経済学部, 助教授 (40133920)
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Keywords | 連邦補助金 / 一般歳入分与 / ブロック補助金 / 特定補助金 / 政府間関係 / 新連邦主義構想 |
Research Abstract |
レーガンの新連邦主義構想は、ジョンソンの「偉大な社会」計画以降ますます中央集権的な色あいを濃厚にしてきた連邦制度のあり方に対して真向からの挑戦を試みたものであった。しかし、1972年一般歳入分与の成立が象徴するように、70年代の政府間財政関係を60年代の延長として見ることは単純化のそしりを免れない。だからといって、70年代の補助金政策を60年代の「創造的連邦主義」の反転として処理してしまえば、80年代にレーガンの新連邦主義構想の生ずる背景は理解しえなくなるし、そもそも70年代にも特定補助金が膨張していった事実すら説明しえなくなる。このように、70年代の連邦補助金制度の動きは錯綜しており、わが国の研究者も従来、これら一連の動向を整合的に理解してきたとはいえない。 この問題を解く鍵は、この時期に民主党が多数を占める議会が大統領、行政府の高官たちに対して強硬な対決姿勢をとっていたこと、そしてこの時期の補助金制度の動向を規定したのはこの議会であったという事実のなかにある。例えば、70年代央の不況対策としてとられた様々な連邦補助事業はすべて議会が主導したものである。議会は、一般歳入分与やブロック補助金を嫌い、環境保全、人種や性に関する差別禁止、労働条件などの規制条項を数多く盛り込んだ特定補助金を好んだ。これは、このような特定補助金が様々な利益集団の要求を満足させるのに最も好都合な手段であったためである。このように、70年代の政府間財政関係の実際は、議会の主導と「利益集団自由主義」の一層の展開により60年代よりも更に複雑性を増した。カーター政権はかかる事態に対して修正を試みたが、いずれも中途半端なものに終わった。それに対して、レーガンはより本格的な対策を講じようとした。次年度はレーガンがなそうとしたこと、実際になしえたことを詳細に明らかにしたい。
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