1989 Fiscal Year Annual Research Report
心筋筋小胞体の微小カルシウム放出の生理的意義に関する電気生理学的研究
Project/Area Number |
63570040
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Research Institution | Saga Medical School |
Principal Investigator |
頴原 嗣尚 佐賀医科大学, 医学部, 教授 (50037446)
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Keywords | 心筋細胞 / 細胞内カルシウム / カフェイン / 非選択性陽イオンチャネル / 筋小胞体 |
Research Abstract |
昨年度の実験結果を踏まえて本年度の実験を進めた結果確認されまたさらに明らかになったことは以下の通りである。1.単離心室筋細胞の前細胞膜電位固定下において、カフェインはパルス状微小内向き電流をバ-スト状に発生させる。2.この微小内向き電流の発生は、細胞内カルシウム注入や膜脱分極(細胞の収縮を伴う)によって増強するので、細胞内カルシウムによってひきおこされたものである。3.このカルシウムはカフェインにより筋小胞体が放出したものと考えられるが、このことは以下の実験により確かめられた。すなわち、筋小胞体のカルシウム放出を特異的に阻害するリアノジン作用下では、カフェインはパルス状内向き電流を発生させなかった。4.セシウムを負荷することにより背景膜電流を強く抑制した条件下で実験を行うことにより、このパルス状内向き電流の膜電位依存性を明らかにすることができた。すなわち、この電流はあたかもシングルチャネル電流のごとく振舞い、そのコンダクタンスはおよそ250pSであり、逆転電位はおよそ-10mVである。5.この逆転電位からイオン特性は非特異的であることが予想されたが、事実ナトリウムをリチウムに置き換えてもパルス状内向き電流は発生した。以上、細胞内カルシウムがコンダクタンスの非常に大きい非選択性陽イオンチャネルを活性化することが明らかとなった。通常細胞内カルシウムが増加するとき(細胞が収縮するとき)には上記のような電流は観察されないこと、またそのチャネル密度は他のイオンチャネルに比較して極端に低いことから、そのチャネルは形質膜のある特定の部位に分布していることが予想された。その可能性としては、形質膜小胞体接着部位、もしくは残存ギャップジャンクション部が考えられる。今後これらの点及びチャネルの生理的意義についての研究の展開が期待される。
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[Publications] Matsuoka,S.: "Reversal potential of the Na-Ca exchange current in the cardiac myocyte of the guinea-pig." Biomed.Res.Suppl.2. 149-152 (1989)
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[Publications] Ehara,T.: "Measurement of reversal potential of Na/Ca exchange current in single ventricular cells of guinea-pig." J.Physiol.410. 227-249 (1989)
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[Publications] Ehara,T.: "chloride-sensitive nature of the adrenaline-induced currents in guinea-pig ventricular cells." J.Physiol.(1990)
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[Publications] Ehara,T.: "Anion channels activated by adrenaline in cardiac myocytes." Nature. (1990)
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[Publications] Noma,A.: "Isolated Adult Cardiac Myocytes.Vol.II(eds.by G.Isenberg and H.M.Piper)" CRC press,U.S.A., 117-125 (1989)