1989 Fiscal Year Annual Research Report
局所脳虚血後の神経回路網損傷の解析と移植による積極的再生の試み
Project/Area Number |
63570679
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 和雄 大阪大学, 医学部, 助手 (90150341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 徹 大阪大学, 医学部, 助教授 (20135700)
最上 平太郎 大阪大学, 医学部, 教授 (00028309)
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Keywords | 虚血性神経細胞死 / 逆行性変性 / 神経回路網 / 虚血性軸索損傷 / 神経栄養因子 / NGF(神経成長因子) / 上皮成長因子(EGF) / 塩基性線維芽細胞成長因子(6FGF) |
Research Abstract |
本年度の研究では、虚血巣周囲に出現する神経栄養因子を産生している細胞を推察するために、虚血性脳損傷時のcーfos蛋白の発現様式を検討した。その結果cーfos蛋白は虚血後7日をピ-クとしてグリアに発現し、またcーfos蛋白陽性のグリアの一部はBUdRで標識される分裂したグリアであることが明かになった。さらにこのcーfos蛋白陽性のグリアはdeefferented neuronの近くに存在することが明かとなり、これらの事実から虚血巣周囲に出現する神経栄養因子はcーfos蛋白陽性のグリアが産生していることが推察された(田口:神経組織の成長・再生・移植)。本年度もこの因子をさらに精製するため2次元電気泳動による分離精製を試みたが、純粋な形での分離精製は困難であった。そこですでに神経栄養効果が明かであるリコンビナント上皮成長因子(EGF)と塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を用いて、脳梗塞後の逆行変性による視床の萎縮を防止しうるかどうかを検討した。EGFは梗塞作成直後にosmotic minipumpを左側脳室内に設置し、ここから5μg/weekの速度で側脳室に注入した。しかし現在までのところこの方法では副作用が強く、また組織学的にも側脳室内の細胞反応が強く実用は困難と判断された。bFGFは梗塞翌日より1μg/0.1mlを週1回の間隔で4回大槽内に注入した。その結果bFGFの大槽内注入は副作用もなく安全に行うことができた。1カ月後に視床後腹側核の萎縮の程度を検討すると、生食投与群では対側の79%にまで萎縮しているのに対して、bFGF投与群では対側の92%であり、萎縮が部分的に防止しえることが示された。また抗GFAP抗体による免疫染色ではbFGFが浸達したと思われる脳槽や側脳室に接する脳組織に、GFAP陽性のグリアが対照群と比較して明らかに多く認められた。このような事実から、bFGFはGFAP陽性のグリアを介して虚血による二次的な視床萎縮を防止しうることが示唆された(山田:神経研究の進歩)。
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Research Products
(16 results)
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[Publications] Kataoka K,et al: "Neuronal network disturbance after focal ischdmia in rats" stroke. 20. 1226-1235 (1989)
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[Publications] Kataoka K,et al: "Differences in functional recovery between cortical and subcortical infarction in choronic MCA occlusion in rats" J Cereb Blood Flow Metabol. 9(Suppl1). s640 (1989)
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[Publications] Wakayama A,et al: "Pharmacologically induced neurological disorders in chronic MCA occlusion in rats" J Cereb Blood Flow Metabol. 9(Suppl1). s641 (1989)
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[Publications] 田口潤智 他: "虚血性脳損傷時のCーfos蛋白の発現様式とその意義" 神経組織の成長・再生・移植. 1. 69-70 (1989)
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[Publications] 田口潤智 他: "局所脳虚血後の軸索傷害とその再生についてー脳梗塞亜急性期ないし慢性期における神経変性傷害の発生機序に関連して" 脳と神経. 41. 813-818 (1989)
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[Publications] 山田和雄 他: "脳虚血周囲組織に出現する神経栄養因子について" 脳と神経. 41. 611-616 (1989)
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[Publications] Yamada K,et al: "Ischemiaーinducud neurotrophic activity detected in the periinfarcted brain tissue and its partial purification" J Cereb Blood Flow Metabol. 9(Suppl1). s2 (1989)
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[Publications] Kinoshita A,et al: "Improvement of anoxic neuronal damage by human recombinant EGF detected with an in vitro anoxia model" J Cereb Blood Flow Metabol. 9(Suppl 1). s7 (1989)
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[Publications] 木下章 他: "ラット初代培養ニュ-ロン上でのEGFreceptorの発現とその機能" 神経化学. 28. 380-381 (1989)
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[Publications] 甲村英二 他: "グリア細胞層上でのラット〓仔香髄後根神経節ニュ-ロンの培養ー神経突起伸長因子の検討" 神経化学. 28. 382-383 (1989)
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[Publications] 山田和雄 他: "脳虚血と神経成長栄養因子" 神経研究の進歩. 34. (1990)
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[Publications] Kohmura E,et al: "Hippocampal neurons become more vulnerable to glutamate after subcritical hypoxia" J Cereb Blood Flow Metabol.
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[Publications] Kinshita A,et al: "Moditication of anoxic neuronal injury by hauman recombinant epidermal growth factor and its possible mechanism" J Neursci Res. 25. (1990)
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[Publications] Kinoshta A,et al: "Hypoxic injury of rat cortical neurons in primary cell culturesーintroduction of a modified method to create the hypoxic state" Exp Cell Biol. 496. (1990)
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[Publications] 山田和雄(分担執筆): "脳卒中実験ハンドブック:理論と実際" アイピ-シ-, (1990)
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[Publications] Yamada K: "Implication of the Bloodーbrain Barrier and its Manipulation Vol 2" Plenum Publishing, 24 (1989)