1988 Fiscal Year Annual Research Report
燐脂質膜小胞に内包された局所麻酔薬リドカインの硬膜外腔投与に関する研究
Project/Area Number |
63570723
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真下 節 大阪大学, 医学部, 講師 (60157188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉矢 生人 大阪大学, 医学部, 教授 (80028505)
柴田 瑩 徳島大学, 薬学部, 助教授 (40035556)
太城 力良 大阪大学, 医学部, 助教授 (20107048)
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Keywords | リポソーム / リドカイン / 局所麻酔薬 / 大脳誘発電位(SEP) / 硬膜外ブロック |
Research Abstract |
本研究では、長時間作用性の局所麻酔薬としてリドカインをリポソームに内包させた徐放製剤を開発し、その臨床的な応用の可能性を調べた。 逆相蒸留法により、卵黄レシチンとコレステロールとリドカイン粉末によりリポソーム内包リドカイン2%懸濁液(pH6)を作成した。ジエチルエーテルに溶解したレシチン+コレステロールの溶液中にpH6の燐酸緩衝液に溶かしたリドカインをゆっくりと加え、二相分離状態の溶液を作った。これを4℃下において超音波破砕器で4分間ソニケートした。得られた白濁液をエバポレーターにかけてエーテルを徐々に除去し、リポソーム内包リドカイン懸濁液を調整した。セルロース膜を用いた透析法により、リドカインのリポソームからの放出を経時的に測定した。その結果、50%透析時間は遊離リドカインでは約40分に対して、リポソーム内包リドカインでは約135分と大きな徐放性効果が認められた。 雑種成犬(体重20.1±3.5kg)を用い、1%ハロセン麻酔下においてリポソーム内包リドカイン(リポソーム群)と遊離リドカイン(遊離群)の硬膜外腔投与の実験を行い比較検討した。第6、7腰椎間で硬膜外腔を穿刺し5cm頭側にカテーテルを留置した。さらに、大槽に脳脊髄液採取用のカテーテルを留置した。また、輸液路および動脈血採取と観血的動脈圧測定のために、大伏在静脈と大腿動脈にカニュレートした。体性感覚誘発電位(SEP)の測定により硬膜外ブロックの持続時間を求めた。後脛骨神経に刺激電極をおいて、舌をアースに、耳介を基準電極にとり、対側の一次体性感覚野に近い頭皮上よりSEPの誘導を行った。測定には日本光電のADDscope ATAC-210およびNeuropack Fourを用いた。リドカイン硬膜外投与前のSEP波形の振幅および潜時が変化した後、再びコントロールの波形に戻るまでの時間を硬膜外ブロックの持続時間とした。硬膜外ブロック持続時間は、リポソーム群では208±49.5分と、遊離群の81±18.1分に比べ約2.5倍で有意に長かった。また、硬膜外ブロック後の収縮期血圧の時間経過をみると、リポソーム群では遊離群に比べてコントロール値への回復の遅延がみられた。 本研究の結果より、リポソーム内包リドカイン徐放性効果がin vitroにおいて証明され、それによる硬膜外ブロックの作用持続効果が明かにされた。以上よりリポソーム内包リドカインの臨床的応用の可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)