1990 Fiscal Year Annual Research Report
微小循環動態からみた妊娠中毒症の病態生理の解明に関する研究
Project/Area Number |
63570787
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前田 博敬 九州大学, 医学部, 助手 (20199631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 和裕 九州大学, 医学部, 助手 (30221261)
宮本 新吾 九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (40209945)
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Keywords | 妊娠中毒症 / 妊娠 / 微小循環 / 静脈血管壁伸展性 / 細静脈 / 血管内皮細胞傷害 / エンドセリン |
Research Abstract |
本年度は妊娠中毒症における1)静脈系血管拡張障害の有無、2)血管系の変化に対する液性因子の関与の2点を明らかにする目的で検討を加えた。 1)静脈系血管拡張障害の有無の検討には、Water plethysmographを用いて肘静脈の静脈血管壁伸展性を測定した。伸展性は非妊時の3.21±0.49ml/dlに対し、正常妊娠後期では4.13±0.61ml/dlと有意に増加し、正常妊娠では後期に至れば血管壁緊張が低下することが明らかとなった。一方、重症妊娠中毒症妊婦の伸展性は2.74±0.51ml/dlであり、軽症妊娠中毒症3.85±0.88ml/dlおよび正常妊娠の伸展性に比べ有意に低下していた。以上より、本症のなかでも少なくとも重症型においては、細動脈の攣縮に加えて静脈血管壁の緊張亢進を有することが示唆された。 2)血管系の変化に対する液性因子の関与は、本症妊婦の血清を用いてin vitroで検討した。a)細胞傷害の有無については、血管内皮細胞における細胞毒性指数(CI値)を用いた。本症妊婦のCI値は6.0±18.4で、正常非妊婦-64.0±8.4、正常妊婦-79.2±52.9と比較して有意に高値であり、血管内皮細胞傷害が本症の病態のひとつであることが示唆された。b)細胞機能への影響に関しては、血管内皮細胞が産生し血管収縮作用を有するエンドセリンについて検討した。本症妊婦血清でのエンドセリン産生量は1.36±0.70ng/mlであり、正常妊婦血清での3.58±1.26ng/mlに比較し有意に低下していた。以上より、本症妊婦は、血管内皮細胞に対する細胞毒性、ならびに血管内皮細胞機能のひとつである血管作動性物質産生を抑制する液性因子を有することが示唆された。
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Research Products
(1 results)