2015 Fiscal Year Annual Research Report
発光性錯体を元素ブロックとする多機能性高分子の創製
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
15H00723
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鍋島 達弥 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80198374)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超分子化学 / 発光性錯体 / 外場応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
発光性錯体を元素ブロックに選び、これらを特異な三次元構造を取るように配列させることで、精密な構造と外部因子応答性をもち、発光材料・電気化学発光材料への応用が期待される機能性高分子の創製を目的に検討を行った。 これまで本新学術研究においてBODIPYのピロール環のα位にチオフェンを導入したBODIPYオリゴマーの合成しており、これらが近赤外領域に発光を示すことを見いだしている。今回、チオフェンの代わりにセレノフェンを導入することで、セレンの重原子効果に起因する蛍光の消光とリン光の発光が見られるもの考え、合成を行ったところ、チオフェンの場合よりも光学特性は若干の長波長シフトを示し、驚くべきことに高い蛍光量子収率は維持されたままであることが明らかとなった。今後、置換位置の異なる誘導体や理論計算によりこれらの光学特性について明らかにする予定である。 またN2O2型ジピリンは四座配位子となるため、通常のジピリンでは得ることが難しい錯体の生成が可能となる。そこでこれを基本骨格とする環状ビスN2O2型ジピリンを合成し、さらに高収率で相当するビスBODIPYへと変換することに成功した。得られた環状BODIPYは八の字型に捻れた構造の分子不斉をもつ興味深い骨格であることがX線結晶構造解析により明らかとなった。さらに光学分割にも成功し、円二色性および円偏光発光を測定したところ、非常に高い値を示すことを見いだすなど、次年度の研究につながる大きな成果を挙げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで合成例のないセレノフェンを導入したBODIPY誘導体を合成し、その光学特性を明らかにすることで、より発光の長波長化が可能な元素ブロックを合成することができた。その他にも、化学的にも光化学的にも非常に安定な分子不斉を有するBODIPY誘導体の合成および光学分割に成功した。また、この分子のラセミ化は通常の条件では起こらないことを明らかにするなど、新しい発光性光学材料のための元素ブロックの合成も達成した。以上の理由から本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
セレノフェンを導入したBODIPYはチオフェンの場合と同じように光音響イメージングのための元素ブロックとして利用できる可能性がある。そこで領域内共同研究によって、チオフェンBODIPY誘導体に加え、セレノフェン体についても同様の検討を行う。また、八の字型ヘリシティーをもつBODIPYは化学的にも安定であり、これまでBOIDPY誘導体が強い光照射条件下や強い酸や塩基の存在下ではあまり安定でないといった問題点を解決できる発光性ユニットになると期待される。今後、これらの安定性の評価に加え、多様な置換基の導入を行い、分子ブロックとしての汎用性を高める検討を行う。これによって光学特性が様々な刺激で制御できる機能性高分子の構築を推進する。
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Research Products
(56 results)