2015 Fiscal Year Annual Research Report
りん光性有機金属元素ブロックを核とするデンドリマー型高分子電子材料の創製
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
15H00759
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
八木 繁幸 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40275277)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 元素ブロック / 有機金属錯体 / りん光材料 / デンドリマー / 有機電界発光素子 / ジピリドフェナジン / 有機イリジウム錯体 / 有機半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、有機電子デバイスに資する発光材料の新規設計概念を提唱するために、りん光性有機金属錯体にp型およびn型半導体部位を分離して配置した両極型りん光デンドリマーの創出と、その有機電界発光素子(OLED)、さらには単分子発光デバイスへの展開を目指している。平成27年度は、以下の項目に示すように、主にりん光デンドリマーの基盤骨格の構築と基礎物性評価を行った。 1.ジピリドフェナジン(dppz)を基盤とする両極型りん光デンドリマーの母骨格として、カルバゾール系ホール輸送(p型)部位を導入したdppz-白金(II)-フェニルアセチリド錯体を合成した。当該錯体は溶液中で赤橙色発光を示すが、フェニルアセチリド配位子にp型部位を導入すると、ニート薄膜状態でも消光が抑制され、発光が確認された。また、当該錯体を単一発光層とするOLEDを作製したところ、光励起の場合と同様の赤橙色発光が観測され、発光層への電子輸送材料の添加によって素子性能が改善された。 2.有機イリジウム錯体を基盤とする両極型りん光デンドリマーの母骨格として、アセチルアセトナート補助配位子の3位にホスフィンオキシド系電子輸送(n型)部位を導入した2-フェニルピリジナート系ビスシクロメタル化イリジウム錯体を合成した。当該錯体は溶液中で緑色発光を示し、また電気化学測定から、OLEDへの応用に適切なHOMO・LUMO準位を有することがわかった。さらに、当該錯体を発光ドーパントとして二重発光層からなるOLEDを作製し、効率的な緑色電界発光を得ることに成功した。本研究ではまた、カルバゾール系ホール輸送性デンドロンを導入した有機イリジウム錯体について、当該錯体を単一発光層とする積層型OLEDを溶液塗布法によって作製することに成功し、高効率な青色電界発光を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度当初の予定として、両極型りん光デンドリマーの合成と基礎物性評価を掲げた。ジピリドフェナジン(dppz)を基盤とする両極型りん光デンドリマーについては、ホール輸送(p型)部位としてカルバゾール骨格を導入したdppz-白金(II)-フェニルアセチリド錯体を候補分子として得ることができた。当該錯体の発光特性やエキシマー・会合抑制能を評価し、固体薄膜状態での発光も確認した。さらには、平成28年度に予定していたOLEDの作製も前倒しで検討することができた。 有機イリジウム錯体を核とする両極型デンドリマーについては、1,3-ジケトナート補助配位子に電子輸送部位を導入することに成功し、当該補助配位子を有するビスシクロメタル化イリジウム錯体をモデル分子として合成した。当該錯体の発光特性やHOMO・LUMO準位の評価については、滞りなく順調に終えることができた。一方、シクロメタル化配位子にホール輸送部位を、補助配位子に電子輸送部位をそれぞれ導入した両極型りん光デンドリマーの合成については、年度内に創出するには至らなかった。しかしながら、合成前駆体はすでに得ているので、研究計画の遅延は平成28年度で十分挽回可能である。なお、ホール輸送部位および電子輸送部位のそれぞれを有するモデル錯体については、OLEDの作製と素子特性評価をすでに実施しており、キャリア輸送部位が有効に機能することを確認できたので、平成28年度に予定している両極型りん光デンドリマーを用いたOLED作製や単分子デバイスへの展開も迅速に評価することが可能である。 以上の達成度を考慮すると、本研究は概ね予定通りの速度で進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に創出した両極型りん光デンドリマーについて、分子設計の修正を行いながら、OLEDの作製・評価と、電極表面上での分子配向制御について検討する。 ジピリドフェナジン(dppz)を基盤とする両極型りん光デンドリマーについては、引き続き当該材料を単一発光層とするOLEDの作製と素子特性評価を行い、優れた発光効率が得られるように素子特性の最適化を行う。また、当該材料を用いて電界効果トランジスタを作製し、正孔および電子移動度を測定することで両極型半導体特性を評価する。以上のOLED特性や半導体特性の評価結果を分子設計にフィードバックし、OLEDの高効率化が達成できるように当該材料の分子構造の最適化を図る。 有機イリジウム錯体を核とする両極型りん光デンドリマーについては、平成27年度で達成できなかった当該材料の合成を早期に完成させる。その上で、dppzを基盤とする両極型りん光デンドリマーの場合と同様、当該錯体についてOLED特性ならびに半導体特性を評価し、高効率OLEDを実現できるように当該材料の分子構造の最適化を図る。 本研究課題ではさらに、単分子電子デバイスを指向して、両極型りん光デンドリマーを電極基盤上に配列させる技術について検討する。スピンコート法からLB法まで幅広く薄膜作製を試みる。作製した薄膜を走査型プローブ顕微鏡(SPM)などの表面解析装置によって分子配向を観察する。可能であれば、単分子膜さらには単分子そのものの半導体特性評価や分子分光計測について検討する。
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Research Products
(12 results)