2015 Fiscal Year Annual Research Report
高機能無機元素ブロック創製を実現する合金クラスターの原子精度での精密合成法の確立
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
15H00763
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
根岸 雄一 東京理科大学, 理学部, 准教授 (20332182)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金クラスター / 精密合成 / 高分解能分離 / 高速液体クロマトグラフィー / 合金クラスター / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、簡便かつ高分解能で親水性金属クラスター混合物を組成毎に分離する技術の確立に取り組んだ。また、HPLCとエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)を連結させたLC/MSにより、分離したクラスターの正確な組成評価を行うことで金クラスターの高分解能分離技術の確立を目指した。試料とするグルタチオン保護金クラスター(Aun(SG)m)を液相還元法により調製し、カルバモイル基からなる親水性相互作用カラムを用いたHPLCにより分離した。得られたUVクロマトグラム中には、複数のピークが観測され、各々のピークの紫外可視吸収スペクトル中にはピーク毎に異なる形状のスペクトルが観測された。LC/MSにより、各ピークの組成を評価したところ、Au10(SG)10、Au15(SG)13、Au18(SG)14、Au25(SG)18、Au29(SG)20、Au33(SG)22などが高分解能で分離されたことが明らかになった。これらのクラスターは2005年に電気泳動法により単離されたが、本手法で単離された成分の方がより鮮明な紫外可視吸収スペクトルを示した。更に、Au20(SG)16、Au26(SG)19など新たな化学組成が分離された。このように、LC/MSによる迅速な分離と組成評価により、Aun(SG)m混合物を異なる組成毎に高分解能で分離するだけでなく、これまで観測されなかった新たな化学種を発見することを可能にした。また、本手法を用いることで合金クラスターについても高分解能でサイズ毎に分離することに成功し、金のみのクラスターではできにくいクラスターが生成することを明らかにした。更に、調製時に添加する異原子の比率に依存して光学吸収がどの程度変化するかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Aun(SR)mクラスターは次のような特徴を有している;1)フォトルミネッセンスやレドックス挙動など、バルク金ではみられないサイズ特異的な物性や機能を示す、2)構成原子数や化学組成に依存してそれらが劇的に変化する、3)化学的手法により合成され、サイズや組成、及び構造の設計・制御が容易であり、それゆえ、物性や機能の制御も容易である、4)配位子の交換反応などにより、表面状態を制御し、溶解度や他分子との結合性を制御することも可能である、5)他の金属クラスターと比べて極めて安定である。こうした特徴が故に、Aun(SR)mクラスターは、高機能、高性能、及び高分子化を施せる元素ブロックとして高いポテンシャルを有している。本研究では、そうした無機元素ブロックに対して、新たな技術の確立し、高機能化への新たな設計指針を打ち立てることで、元素ブロック高分子材料材料の創出に対して貢献することを目指している。初年度の研究では、親水性金属クラスターに対して、高分解能分離技術と化学組成評価方法を確立することに成功した。従って、研究は極めて順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
多くの気相研究から明らかにされているように、異種原子のドーピングは金属クラスターの安定性や物理/化学的性質に大きな影響を与える。申請者らのこれまでの研究より、魔法数Aun(SR)mクラスターについても、Pdをドープするとその安定性や表面反応性が著しく向上することが明らかになっている。魔法数クラスターに対する異原子ドープ効果を解明することは、安定で新しい機能を有する金属クラスターの創製に極めて重要である。しかし一部の系を除くと、現状技術でドープクラスターを精密合成することは極めて困難である。例えば、Au25(SR)18にAgやCuをドープしたAu25-nAgn(SR)18とAu25-nCun(SR)18は、合成時、ドープ数(n)に分布が生じてしまう。これらのドープクラスターについて、ドープ効果の詳細を明らかにし、厳密な機能制御を実現するためには、ドープ数に分布を持って生成してしまうクラスターを、ドープ数毎に高分解能で分離する必要があり、その方法の確立が不可欠である。今後は、1)合金クラスターを「ドープ数毎に」高分解能で分離する新規方法論を確立する。また、得られた精密合金クラスターを調べることで、2)異原子ドープが魔法数クラスターの物理/化学的性質に与える影響を、「原子精度にて」明らかにする。3)これらの研究を通して、新規高機能無機元素ブロック創製に対する新たな設計指針を打ち立てる。
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Research Products
(89 results)