2015 Fiscal Year Annual Research Report
修正重力理論におけるコンパクト天体からの重力波
Publicly Offered Research
Project Area | New development in astrophysics through multimessenger observations of gravitational wave sources |
Project/Area Number |
15H00777
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須山 輝明 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20456198)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 修正重力理論 / ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
与えられたスカラー・テンソル理論において、ブラックホールの性質を調べることは、強重力場での重力理論の検証という観点から重要なテーマである。近年、スカラー場のシフト対称性を有するホルンデスキー理論の枠組みで、計量場は静的・球対称なブラックホール時空を表しているにもかかわらず、スカラー場は非自明な空間プロファイルを持つだけでなく時間にも依存するという大変興味深い解の集合が見つかった。この解集合の一部は、シュバルツシルト-ドジッター解になっているが、計量から読み取った有効宇宙定数は、ラグランジアンに現れている宇宙定数とは別物になっており、その意味で宇宙定数のスクリーニングを実現した解になっている。こういった興味深い性質を持つ解であるが、その安定性は調べられていなかった。それを実際に奇パリティ型に限定して摂動解析を行った。解析の結果、シフト対称性という条件を満たすホルンデスキー理論の範囲では、ラグランジアンの具体的形に依らず、摂動はブラックホールの地平線近傍では、必ずゴースト的になり不安定になってしまうことが分かった。よって、そのような解が現実世界を記述する可能性は棄却された。 また、ホルンデスキー理論の枠組みで、物質の密度がある臨界密度以上で、自発的スカラー化が起こるスカラーテンソル理論を提唱した。自発的スカラー化が起こっている相では、重力定数が小さくなること、有効宇宙定数が現れること、スカラー場と物質との相互作用が生じること、の3点において、重力の法則が一般相対論からずれることを明らかにした。そして、有質量のおかけで、スカラー場の振動成分が暗黒物質として振る舞うこと、一般相対論が宇宙論的アトラクターになること、宇宙初期インフレーション中に起こる自発的スカラー化により、暗黒物質として観測から要求される存在量も説明可能なことを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年注目を集めていた時間変化するスカラー場を伴ったブラックホール解が不安定であることを示したこは、修正重力理論においても現実的に安定に存在できるブラックホールは限られていることを明らかにした点で意義があると考える。また、ホルンデスキー理論の枠組みで、太陽系等の弱い重力場での観測制限を満たしつつ、高密度領域で重力定数が変化するようなスカラーテンソル理論を提唱したことは、今後の重力波観測が修正重力理論を検証するために本質的に重要となることを裏付けたという点でも意義があると考える。以上の理由から、これまでの研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
前述したように、ホルンデスキー理論の枠組みで、太陽系等の弱い重力場での観測制限を満たしつつ、高密度領域で重力定数が変化するようなスカラーテンソル理論を提唱した。この理論によると、中性子星等の高密度コンパクト天体の内部では、重力定数が変化し、その結果重力法則が一般相対論とずれる。今後は、このタイプのスカラーテンソル理論に対して、どのような観測量に一般相対論の予言からのずれが顕著に表れるかを明らかにする。中性子星の内部構造を修正されたTolman-Oppenheimer-Volkoff方程式を解くことで決定し、中性子星の質量・半径関係を明らかにすることが最初に取り掛かるべきことであろう。また中性子星-中性子星連星、中性子星-ブラックホール連星から放射される重力波をポストニュートン近似を使って評価し、重力波の波形を一般相対論との予言と比較することもその後の課題である。
|
Research Products
(14 results)