2015 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホール準固有振動がもたらす重力波の観測
Publicly Offered Research
Project Area | New development in astrophysics through multimessenger observations of gravitational wave sources |
Project/Area Number |
15H00778
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宗宮 健太郎 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (10582603)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 重力波 / ブラックホール / リングダウン / データ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究目標として掲げていたのは、(i)準固有振動波形の計算、(ii)マッチドフィルタリングのテストスタディ、(iii)実データを用いた非定常雑音レートの検証、という3つである。(i)準固有振動波形の計算については、数値相対論コードの作成について情報収集を行なった。Einstein Toolkitと呼ばれる数値相対論コードが公開されており、それを用いるのがよいということが分かったが、まだ使用できる段階には至っていない。(ii)マッチドフィルタリングのテストスタディについては、当研究室内で研究グループを立ち上げ、昨年度に学生が生成したコードのデバッグと高速化を行なった。単一周波数のソースについてはパラメタ空間内でのサーチが機能するようになり、本研究の一つのマイルストーンを突破したと言える。(iii)実データを用いた解析については、LIGOのデータが公開されたので、それをダウンロードし、我々のPCで読み込めるようにしたが、非定常雑音レートの検証という段階には至っておらず、次年度の課題となった。
本研究を開始して10か月ほどが経過した2016年2月に、米国のAdvanced LIGO干渉計によるブラックホールの観測が報告された。この観測では、連星が合体する前のインスパイラル信号だけでなく、合体後のリングダウン信号がきれいに見えており、リングダウン信号についてはまさに我々が狙っていた観測対象であった。重力波観測のニュースが流れてからすぐに我々はLIGOの研究チームによって書かれた論文を読み、今後の方針を話し合った。KAGRAのデータ解析チームが立ち上げたブラックホール準固有振動の研究会に参加し、本研究の重要性を再認識すると共に、高調波解析に重点を置くなどの今後の具体的な方向性を決めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はKAGRAで重力波を観測することを念頭において行っている。平成27年度はKAGRAの建設が急ピッチで進み、我々の研究グループからも多くのリソースを割かなければならなくなり、その分だけ本研究の進展が遅れてしまったものである。
しかし一方で、次年度に向けた情報収集は着々と行っており、特にLIGOによる重力波観測のニュース以降は、学内外の研究グループとの交流も増え、研究も軌道に乗りつつあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた平成28年度の研究目標は、実データを用いて高調波解析を行い、非定常雑音のレートがどれだけ下がるかを見ることであった。平成27年度の進展は遅れ気味であるが、この目標は変わっていない。年度の前半に大阪市立大と1か月規模の人的交流を行う予定で、そこで研究を一気に加速させ、目標の到達を目指す。
具体的な研究内容としては、平成27年度の目標としていた、(i)準固有振動波形の計算、(ii)マッチドフィルタリングのテストスタディ、(iii)実データを用いた非定常雑音レートの検証、のうち(i)についてはCaltechグループが公開しているデータベースを利用することにして(ii)と(iii)に進む。
ただし、30太陽質量程度のブラックホール連星合体の場合は、信号雑音比はほとんどインスパイラル信号で決まってしまうため、我々が考えていたようなリングダウンのみの解析はあまり意味をもたないことが分かってきたので、ターゲットはもう少し重いブラックホールということになる。Caltechのデータベースの中からアンイコールマスケースの波形を探してくるか、そうでなければ結局最後は自ら波形の計算をしなければならないので、Einstein Toolkitを利用することを検討する。大学院生と手分けしてこれらを並行して進めていくことになる。
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