2015 Fiscal Year Annual Research Report
核酸上を一次元的に動く分子マシンの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Development of Molecular Robots equipped with sensors and intelligence |
Project/Area Number |
15H00793
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鬼塚 和光 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00707961)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 反応性核酸 / DNA / 分子マシン / 貫通構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では生理的条件下で標的核酸に対し貫通構造を構築し、さらにその分子の動きを制御することで、核酸上を一次元的に動く分子マシンの開発を目指している。以前我々は、一対の反応性オリゴDNA(ODN)を標的核酸に加えて二本鎖を形成させることで、二種類の化学反応を誘起させ、貫通構造を構築することに成功している。しかし、この形成収率はDNAに対して80%、RNAに対して70%で頭打ちになっていた。そこで本年度は最初に標的核酸に対する貫通構造構築の最適条件を探索した。分子の設計は以下三点に着目し行った。 ①反応性基を伸長しているヌクレオチド間の塩基数 (m)をm = 8, 10, 11, 13とした。 ②リンカーを挿入する部位を糖の2’位またはピリミジン塩基の5位とした。 ③アジド基を修飾しているPEGリンカーの長さ (n)をn = 5, 7, 9, 11とした。 また副反応を防ぐために、ホスホロチオエート基はジスルフィド基ダイマーとすることで保護し、系中のグルタチオンにより活性化することを計画した。合成した種々の反応性ODNは組み合わせを変え、貫通構造形成反応をゲルシフトアッセイにて系統的に解析した。その結果、いくつかの組み合わせで既存のものより、高効率、高収率で反応が進行し、RNAを標的にしたときに最大、5分で85%の反応を見出すことに成功した。 次にあらかじめ環状化したODNを用いて、スリッピングによる貫通構造形成法を調査した。その結果、環状化したODN構造のテイル配列部があるときのみ、スリッピングが効率的に起きることを見出した。また、温度をコントロールすることで、可逆的な貫通構造形成にも成功した。特に、70℃以上の高温下で環状化したODNが軸となる核酸から解離したことから、高温条件下で環状核酸を一次元的に動かすことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、目的達成に必要な貫通構造形成の基礎部分の確立に成功し、実験の中でスリッピングによる貫通構造形成に関する新しい現象も見出すことに成功した。さらに厳しい条件下のみではあるが目的の核酸上を一次元的に動く分子マシンの構築に成功できたため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、環状分子の動きを光可逆的に制御できる光駆動型分子マシンの創製を目指す。具体的には名古屋大学の浅沼教授らによって開発されたアゾベンゼン‐トレオニノールによる光制御法を貫通構造形成核酸に適用させ、光可逆的に環状核酸の動きを制御する。このアゾベンゼン‐トレオニノールの系は、UV照射によりアゾベンゼンをtrans型からcis型へ光異性化することで二本鎖構造の不安定化を誘起できる。一方で、可視光照射によりcis型からtrans型へ構造を戻すことが可能であり、光可逆的に二本鎖構造の安定性を変化させることができる。この系を利用すると、擬ロタキサン形成核酸が標的核酸内部で環状構造を形成、trans型の時、この環状核酸は静止しているが、UV照射で二本鎖構造が不安定化し可動状態になることが期待できる。 また、この可動性光制御の可逆性を環状のテンプレートを用いたカテナンの系で検証することを計画している。具体的には、蛍光団で修飾した環状のテンプレートDNAに、クエンチャーを修飾した貫通構造形成核酸を反応させる。形成されたカテナンはクエンチャーが近傍に存在しているため蛍光が消光されているが、光照射後、環状核酸がテンプレート上を動き回れば、蛍光が回復する。再度、光異性化を起こせばまた元に戻るため、この系により可逆性を実証できると考えている。
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Research Products
(5 results)