2015 Fiscal Year Annual Research Report
群分子ロボット実現のための多細胞間情報伝達の数理モデル化
Publicly Offered Research
Project Area | Development of Molecular Robots equipped with sensors and intelligence |
Project/Area Number |
15H00815
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
安井 真人 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 特別研究員 (60732948)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 数理モデル / 細胞性粘菌 / 細胞運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞性粘菌は単細胞期と多細胞期が存在し、単細胞・多細胞型ロボットの設計において大いに参考になる。これまで我々が行ってきた研究により単細胞運動を数理モデル化し動作原理を理解できた。これにより単細胞の自発運動をシミュレーションにより再現できるようになった。
今年度は単細胞運動モデルを拡張して多細胞運動の数理モデル化に着手した。モデルの多細胞化には2つの課題があった。それは計算量と細胞間情報伝達のモデル化である。まず、1つ目は計算量であるが、多細胞体では細胞の数が多いため、これまでのアルゴリズムでは実時間での計算は難しい。1細胞ごとに計算する必要があるため、100細胞なら単純に100倍の計算時間がかかる。この課題を解決するため、複数CPUを積んだ計算機を購入し、並列計算可能なアルゴリズムに変更した。その結果、2500細胞のシミュレーションを行うことが可能となった。 2つ目は細胞間情報伝達の導入である。これまでの細胞運動モデルには化学物質の感受・放出・拡散がモデルに組み込まれていない。そのため、実験でみられる多細胞間のやり取りを再現することはできていなかった。そこで、モデルに細胞間のやり取りを組み込み、動作を確認した。
上記の他に、共同研究者とのcAMPプローブ開発により高感度計測も可能となり、実験により理論検証ができる体制も整った。次年度からは実験結果と比較し多細胞型ロボットの動作原理を探る。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は多細胞運動をシミュレーションできることを目標としていた。そして実際に、マルチCPUによる並列計算をこれまでの単細胞運動に適用し、数千細胞のシミュレーションを可能とした。このシミュレーションにより多細胞運動を単一細胞内の化学反応レベルでシミュレーションできるようになった。当初3次元シミュレーションを予定していたが、計算時間がかかり過ぎると判断し、2次元シミュレーションを行う方向に方針を変更した。
上記に加え、cAMPの高感度化にも成功し、細胞運動・細胞内タンパク質の局在・cAMPの同時イメージングを実現した。そして、我々が新しく開発した細胞追跡ソフトの開発により、単一細胞を3次元追跡しつつcAMPの変化を定量的に計測できるようになった。その結果、細胞性粘菌の集合から多細胞体形成までの全ステージにおいて1細胞レベルの定量データを取得できるようになった。
今年度の進展により、基礎となるシミュレータと定量的な実験データの取得が可能となった。以上のことから、おおむね順調に進展しているという評価に至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度において、基盤となるシミュレータと定量データを得ることができるようになった。しかし、シミュレータのパラメタが合っていないため、実験によって得られた定量データを説明するに至っていない。例えば、実験データではcAMPの波が観測されているが、シミュレータではまだ再現できていない。
そこで、今後は、実験データと合うように、モデルのパラメタ調整を行う。多細胞だと計算量が多いためまずは単細胞もしくは数細胞レベルで実験とシミュレーションをしパラメタを調整する。この際、実験結果とモデルとの比較には、cAMPの変化と細胞運動の統計量を用いる。単一細胞でのパラメタ調整が済んだら、多細胞に増やし実験結果を再現できるかを検証する。パラメタ調整を通じて説明がつかない場合は、モデルの変更を検討する。また、モデルより予測される現象を検証するため、変異体を用いることも出てくるだろう。
上記の方法により構築されたモデルより、細胞性粘菌が進化の過程でたどり着いた多細胞運動の利点について理解し、群分子ロボットの構成方法についてのヒントを探る。
|
Research Products
(3 results)