2015 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子応答性ゲルを用いたマイクロアクチュエータシステムの構築
Publicly Offered Research
Project Area | Development of Molecular Robots equipped with sensors and intelligence |
Project/Area Number |
15H00827
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宮田 隆志 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50239414)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生体分子応答性ゲル / 分子認識 / 動的架橋 / アクチュエータ / マイクロデバイス / マイクロ流路 / 分子複合体 / 刺激応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,生体分子応答性ゲルのコンセプトを拡張し,標的分子を入力としてインプットすると動的架橋のネットワーク構造変化により情報変換し,マクロな体積変化を出力情報としてアウトプットできるスマートゲルシステムの創出を試みる。さらに,生体分子応答性挙動を新規なアクチュエータシステムとして利用することにより,自律応答性のマイクロ流路システムやロジックゲートの構築を目指す。平成27年度は以下のような研究成果が得られた。 (i)屈曲する生体分子応答性ゲルの合成とアクチュエータシステムの構築:まず板状の鋳型内でアクリルアミドと架橋剤モノマーとを共重合することによってポリアクリルアミド(PAAm)ゲル層を形成させた。さらにPAAmゲル層の片面上で,重合性官能基を導入したシクロデキストリン(CD)をリガンドとし,標的分子のビスフェノールA(BPA)を鋳型とした分子インプリント法により分子インプリントゲル層を形成させた。このようにしてPAAmゲル層とBPAインプリントゲル層とからなる2層ゲルを調製した。この2層ゲルを標的BPAが溶解した水溶液に浸漬させ,膨潤率と屈曲率を測定した結果,標的BPAに応答して若干曲がる挙動を示した。 (ii)マイクロサイズの生体分子応答性ゲルの合成とマイクロアクチュエータシステムの構築:蛍光顕微鏡を用いた光重合により,マイクロ流路内の任意の場所にマイクロサイズの生体分子応答性ゲルを調製する方法を検討した。まず,生体分子応答性ゲルを合成するためのモノマーと光重合開始剤をマイクロ流路に入れ,蛍光顕微鏡で局所的にUV照射することにより,応答膨潤型の生体分子架橋ゲルと応答収縮型の分子インプリントゲルの合成に成功した。このようにして合成した生体分子応答性ゲルに標的分子を接触させ,その膨潤収縮挙動を調べた。その結果,標的生体分子が存在すると生体分子架橋ゲルは膨潤し,生体分子インプリントゲルは収縮した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ポリアクリルアミドゲル層と分子応答性ゲル層とからなる2層ゲルの調製では,それぞれのゲルの架橋密度が異なり,2層ゲルが形成された段階で直線状のゲルを得ることが困難であった。そこで,各ゲル層の架橋密度を変化させて,水に対する膨潤率が同じになるように設計することにより,直線状の2層ゲルの調製に成功した。 一方,顕微鏡を用いた光重合によりマイクロサイズの生体分子応答性ゲルを合成する重合条件を見出すために多くの時間を要すると予想された。しかし,様々な条件で合成を試みた結果,比較的早い段階で光重合条件を決定することができた。その結果として,応答膨潤型と応答収縮型の2種類の異なる分子応答性ゲルを合成することに成功した。このようにいくつかの困難があったものの,予定以上にゲルの合成が進んでいるため,当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も引き続き,分子応答性屈曲ゲルとマイクロ流路制御ゲルバルブの調製を行い,最適な応答挙動を示すゲルの設計を試みる。特に,分子応答性屈曲ゲルの調製では,直線状のゲルを合成することは可能になったが,標的分子に応答した屈曲挙動が小さいため,架橋密度などを変化させて最適なゲルの構造設計を行う。さらに,可能であれば別の分子応答性ゲル層を2層ゲルの表面に形成させることによって3層ゲルを調製し,2種類の分子に応答して左右の異なる方向に屈曲するゲルの調製も試みる。 一方,マイクロ流路制御ゲルバルブの調製では,これまでに応答膨潤型と応答収縮型の分子応答性ゲルをマイクロ流路内に調製することに成功しているので,その流路に標的分子を流した場合の流量変化について検討する。また,マイクロ流路の分岐点に異なる分子応答性ゲルを調製し,AND/ORのロジックゲートの作製も試みる予定である。
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Research Products
(18 results)