2015 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチドと核酸の人工複合二次構造を用いた刺激応答感覚素子の作製
Publicly Offered Research
Project Area | Development of Molecular Robots equipped with sensors and intelligence |
Project/Area Number |
15H00828
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
臼井 健二 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 准教授 (70543792)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 分子機械 / 生体機能利用 / 人工ペプチド / 酵素反応スイッチ / ミネラリゼーション / 核酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子ロボティクス研究において、感覚素子創製には、ナノ構造体を刺激により変化させる機構を構築した後に、出力を付与する手法も有効な方法となる。本研究では、人工ペプチドを用いて、核酸との新規複合構造を形成し、ペプチドにスイッチなどの機能を付与する方法で、分子ロボティクス領域に必要な感覚素子作製に挑戦する。我々はこれまで核酸塩基を側鎖にもつペプチド核酸(PNA)を用いた素子構築を試みており、今年度は2テーマ行った。1つ目は、ペプチドと核酸を融合した新規二次構造の構築である。本テーマではPNA配列とプロテアーゼ基質配列をもつペプチドを作製することで、プロテアーゼ非存在下でペプチド-G-rich DNA複合構造を形成し、存在下では形成しなくなるというスイッチを作製した。G-rich DNAはナノワイヤーの形成が可能なので、さらに本スイッチを発展させ、ワイヤー構造形成をプロテアーゼの有無でスイッチするシステムも構築した。さらにリバーシブルなスイッチ機能をもつ人工ペプチドの作製に試み、リン酸脱リン酸により複合形成能が変化するシステムの構築も行った。2つ目のテーマでは、無機物とDNAの融合素子創製を目標に、PNAペプチドとDNAを用いて無機物沈殿によるナノ構造体作製に成功した。具体的にはDNAの両末端と相補的に結合するPNA配列を持つシリカ沈殿ペプチドを設計・合成し、DNAと複合させ、ペプチド部分のみにシリカ沈殿を促すことで、ダンベル型有機-無機複合体の作製に成功している。本研究テーマにより、無機物沈殿の位置特異的制御の基礎的な手法の確立が期待できる。以上遂行してきた2テーマより、ペプチドは核酸と組み合わせることで、目的に応じた素子が容易に創製でき、本領域への大きな貢献が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず当初の予定通り、ワイヤー構造のスイッチシステムを酵素反応スイッチ機能をもつ人工ペプチドを用いて構築できた。また、リバーシブルなスイッチシステムの構築にも着手でき、光反応によるスイッチシステムは途上であるものの、酵素反応によるスイッチシステムの構築に成功した。以上の成果は複数の学会で発表を行ったほか、論文も現在執筆中である。さらに、二つ目のテーマを新たに遂行し、無機物とDNA・ペプチドの融合素子創製に成功し、分子ロボティクスにおける無機物との融合を提案できた。以上の成果も複数の学会で発表を行ったほか、原著論文も1報は発行され、もう1報も現在投稿中であり、当初予想していたものよりも多くの成果が得られている。最終年度は1つ目のテーマが若干遅れ気味であるので、鋭意、光反応によるリバーシブルシステムを構築し、バイオ分野への応用展開であるタンパク質発現制御システムの構築を目指していきたい。以上のように、当初予定していた研究内容を遂行でき、さらに新たなテーマにおいて成果が得られており、最終年度である2年目も当初の計画以上に進展が期待できることから「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.前年度に遂行しきれなかった光反応のリバーシブルスイッチの構築を行う。具体的にはazobenzene誘導体をペプチド鎖中に導入したペプチドの合成を行う。合成後、速やかに、構造形成能やスイッチ機能の評価を行う。 2.これまでに合成したペプチドのうちで、構造形成能やスイッチ能が確認できたペプチドを用いて、無細胞発現系での転写出力実験・翻訳出力実験を行う。複合体形成が可能な核酸配列を、タンパク質がコードされた遺伝子の上流に組み込んだプラスミドを構築する。次に、無細胞タンパク質合成システム、PUREシステムを用い、発現効率の変化を目的タンパク質の発現量変化により確認する。発光値による簡便な測定を可能にするため、発光タンパク質であるルシフェラーゼをモデルとして用いる。さらに、転写、翻訳のどちらが効率よい出力系となるかは不明であるため、転写と翻訳を別々に行い、詳細解析を行う。転写系では、先述のプラスミドを用い、RNA産物の量変化を電気泳動などにより解析する。また、翻訳系では、先述のプラスミドから転写したRNAとPUREシステムを用いてルシフェラーゼ発光量により評価する。この成果をもとに生体内では実際にどのような割合で本分子が転写、翻訳に関与し制御するのか、タンパク質発現システムの構築の観点からも解析を進めていく。 3.別の出力系であるDNAワイヤー構造変化系の研究を行う。カルシウム存在下で、DNAワイヤーを形成させた後に、本ペプチドを添加することで、DNAのみのワイヤーからDNA-ペプチド複合体の集合体への構造変化を確認する。さらに、光や酵素などの処理でペプチドがDNAへの結合能を失うことにより、構造変化したDNA-ペプチド複合体の集合体から、再びDNAのみのワイヤー構造に戻ることを確認する。さらにリバーシブルな系においては、繰り返し以上の構造変化が可能であることを確認していく。
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Research Products
(16 results)