2015 Fiscal Year Annual Research Report
光生成反応による反K中間子原子核探索のための粒子識別検出器開発
Publicly Offered Research
Project Area | Nuclear matter in neutron stars investigated by experiments and astronomical observations |
Project/Area Number |
15H00839
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
時安 敦史 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (40739471)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハドロン物理学 / K中間子原子核 / 実験核物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、SPring-8で建設中のLEPS2実験において、反K中間子原子核を探索することである。LEPS2実験では逆コンプトン散乱による1.5-3.0GeVの大強度ガンマ線を用いたハドロンの光生成実験が行われる予定である。反応生成物の同定には、ソレノイド電磁石と、その内部のTPC、RPC等の検出器群から構成されるLEPS2ソレノイドスペクトロメータを使用する。本研究では、LEPS2ソレノイドスペクトロメータの標的周辺で粒子同定、データ取得トリガー生成のためのカウンター検出器を製作する。製作する検出器は1.スタートカウンター(SC)、2.リングイメージチェレンコフカウンター(RICH)である。 SCは6枚の長方形型のシンチレータを標的を覆うように配置する。磁場中で使用するため、シンチレータからの光信号はMPPCを用いて読み出す。SCでデータ取得トリガーを生成し、また粒子通過時のエネルギー損失を用いてパイ中間子、陽子の粒子同定を行う。次に2のRICHは標的下流に配置し、前方に生成されたK中間子を同定する。RICHはラジエータに屈折率1.03のエアロジェルを用い、8x8の3mmMPPCアレイでチェレンコフリングを読み出す。チェレンコフリングの半径からK中間子、パイ中間子、陽子の同定を行う。(前方のドリフトチェンバーを用いた飛跡解析から運動量が求まるため各粒子の半径は予測できる。) 平成27年度は、SC、RICHに必要なコンポーネント、具体的にはシンチレータ、MPPC、エアロジェルを購入し、宇宙線を用いた評価を行った。またデータ取得方法についても複数の手段を検討し、データ取得効率の比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スタートカウンター(SC)、リングイメージチェレンコフカウンター(RICH)ともに製作に必要なコンポーネントはほぼ購入を終えた。現在は最小限のセットアップでの性能評価実験を実施中である。 SCに関してはシンチレータにMPPCを両端に接続したモジュールを3台製作し、宇宙線を用いて性能評価を行った。その結果、達成目標であった300psの時間分解能が達成されていることを確認したが、印可電圧により、その値が大きく変動することが明らかになった。実機製作においては、電源のセグメント化を行い、また印可電圧を微調整する電子回路を製作する必要がある。また、SCの信号読み出しの方法の選定を行った。近年、東北大学グループと富士ダイアモンドの協力によって開発されたQTCモジュールを用いて、データ取得が可能であることを実証した。 次に、RICHに関しては岐阜大と協力して、EASIROCチップを利用したNIM回路を用いて読み出し方法の最適化を行った。現在は、RICHの架台設計が終了し、また実機に用いるMPPCアレイの読み出しをテストしているところである。 なお、平成27年度に予定していた東北大学電子光理学研究センター(ELPH)において、陽電子ビームを用いた性能評価実験は実験器具の納期の遅れから、延期となった。平成28年度前期に再度ビームタイムを申請し、認められた。 また、加えて次世代データ取得システムのコンポーネントとして利用可能なMOCOモジュール(理研開発)を製作し、LEPS実験の条件のもとで使用可能かの評価を行った。現在はソフトウェア開発も含め、理研、京都大学のグループとの協力のもと、実用化の検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は本研究の最終年度であり、平成27年度にテスト評価を行った検出器をLEPS2ソレノイドスペクトロメータシステムに組み込み、今年度12月に予定されているLEPS2実験コミッショニングランにおいて運用を行う。コミッショニングランではLEPS2ソレノイド磁石内に最低限の検出器を設置してシステムを構築し、検出器群の動作を確認する予定である。SPring-8のLEPS2実験棟においてガンマ線をCH2標的に照射し、gamma + p -> pi+ + pi- + p反応の同定、および断面積の測定を最終目標とする。 本研究で製作するスタートカウンター(SC)は今年度早期に実機を製作し、9月からLEPS2ソレノイドスペクトロメータシステムに組み込む予定である。10月、11月を通じて宇宙線を用いてスペクトロメータシステム全体の性能評価実験を行う。SCはここでデータ取得時のトリガー生成という重要な役割を担うことになる。コミッショニングラン時にはデータ取得時のトリガー生成に加えて、エネルギー損失の測定値を用いて、パイ中間子、陽子の粒子同定を行う。 リングイメージチェレンコフカウンター(RICH)に関しては、平成28年度後期に東北大学電子光理学研究センター(ELPH)において、500MeVの陽電子ビームを用いて性能評価を行う。リングの半径が計算値と同様であることが確認されたら、実機についての最適化を行う。具体的には、ラジエータ、MPPCアレイ間の距離の調整を行う。その後、コミッショニングラン中に標的直下に配置し、K中間子の検出のための評価を行う。最終的には本研究の最終目標である反K中間子原子核探索のためのデータ取得を試みる。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] J-PARC E19 Experiment: Pentaquark Θ+ Search in Hadronic Reaction at J-PARC2015
Author(s)
Tomonori N. Takahashi, Satoshi Adachi, Michelangelo Agnello, Shuhei Ajimura, Kanae Aoki, Hyoung Chan Bhang, Bernd Bassalleck, Elena Botta, Stefania Bufalino, Nobuyuki Chiga, Hiroyuki Ekawa, Petr Evtoukhovitch, Alessandro Feliciello, Hiroyuki Fujioka, Shuhei Hayakawa, Fumiki Hiruma et al.
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Journal Title
JPS Conf.Proc.
Volume: 8
Pages: 022011-022017
DOI
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[Journal Article] J-PARC E27 Experiment to Search for a K-pp Bound State2015
Author(s)
Yudai Ichikawa, Tomofumi Nagae, Satoshi Adachi, Michelangelo Agnello, Shuhei Ajimura, Kanae Aoki, Hyoung Chan Bhang, Bernd Bassalleck, Elena Botta, Stefania Bufalino, Nobuyuki Chiga, Hiroyuki Ekawa, Petr Evtoukhovitch, Alessandro Feliciello, Hiroyuki Fujioka, Shuhei Hayakawa, et al.
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Journal Title
JPS Conf.Proc.
Volume: 8
Pages: 021020-022027
DOI
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[Presentation] FORESTアップグレードに向けた光子ビーム標識化装置の較正(II)2015
Author(s)
時安敦史, 石川貴嗣, 神田浩樹, 木戸聡, 清水肇, 土川雄介, 東谷千比呂, 長澤育郎, 本多佑記, 前田和茂, 松村裕二, 宮部学, 武藤俊哉, 村松憲仁, 山崎寛仁
Organizer
日本物理学会
Place of Presentation
大阪市立大学(大阪府、大阪市)
Year and Date
2015-09-26
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