2015 Fiscal Year Annual Research Report
重イオン弾性散乱による高密度領域の核媒質効果の分析
Publicly Offered Research
Project Area | Nuclear matter in neutron stars investigated by experiments and astronomical observations |
Project/Area Number |
15H00842
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Research Institution | Ichinoseki National College of Technology |
Principal Investigator |
古本 猛憲 一関工業高等専門学校, 准教授 (20581086)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原子核反応 / 三体力 / 高密度核媒質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、地上で実験観測可能な原子核散乱反応から飽和密度を超えた高密度領域の情報を引きだすことである。そのため、本研究に用いる微視的核反応模型の改良を行い、理論的に分析を進めた。 本研究の分析方法は世界的に初めての試みとなるため、模型の信頼性を確立する必要がある。そのため本研究における模型を用いた系統的な分析を行った。その結果、飽和密度を越えた高密度領域の情報を引きだすことが可能であると示した。その中で、複数の核子間に働く多体力の内、三核子間に働く三体力効果が最も重要な役割を担っていることを明らかにした。さらに、質量依存性やエネルギー依存性など、反応系によって高密度媒質効果の詳細な見え方が異なることも示すことができた。これらの成果は、現在、論文としてまとめている最中である。 また、この反応系による高密度媒質効果の影響の違いから、最適な反応系が存在することが明らかとなり、今後の研究方針に役立つ成果を挙げることができた。 本年度は、ポーランドのクラクフで行われた国際会議(5th International Symposium on Nuclear Symmetry Energy (NuSYM15))に招待され、本研究について講演を行った。また、ポーランドのピアスキーで行われた国際会議(Mazurian Lakes Conference on Physics)で口頭発表ならびにポスター発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、実験データの存在する領域の系統的な分析が終わり、その結果から最適な反応系が存在することを示すことができた。また、論文執筆もおおまかには終わっており、細かい点の確認等を行っているところである。これより、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本年度に得られた成果となる、現在執筆中の論文を発表する。これにより、高密度領域を分析する新たな手法が確立されたことを世界に発表する。 次に、本研究は理論的な研究ではあるが、実験観測可能な物理量での検証を行っている。そのため、本研究で提唱した手法による最適な系を見つけ出すことに専念する。これによって、原子核散乱反応と高密度核媒質効果の関係性を明らかにし、複数の核子間に働く多体力効果や核媒質における状態方程式の重要な役割を明らかにする。 さらに、飽和密度の観点からα(4He)原子核散乱にも注目し、分析を進める。α原子核の内側の密度は、一般的に知られている飽和密度を大きく超えていることが知られている。この特性を用いて、通常の原子核よりから得られる情報よりもさらに高密度領域の情報を得ることに専念する。
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Research Products
(4 results)