2015 Fiscal Year Annual Research Report
中性子星観測から迫る原子核飽和パラメータの制限
Publicly Offered Research
Project Area | Nuclear matter in neutron stars investigated by experiments and astronomical observations |
Project/Area Number |
15H00843
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
祖谷 元 国立天文台, 理論研究部, 特任助教 (70386720)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / 中性子星 / 状態方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子星の表面近くのクラストと呼ばれる領域は、標準的な質量の中性子星では星半径のせいぜい1割程度しかない。しかし、クラストの最深部での密度はおよそ原子核飽和密度となることが理論的に予想されているため、この薄いクラストでの現象を観測することで、地球上での原子核実験から得られる情報とは質の異なる制限が得られると期待される。そこで、我々は巨大フレア現象の減衰過程で発見された準周期的振動に着目している。巨大フレア現象は軟γ線リピーターで観測されているが、その中心天体は強磁場中性子星と考えられる。そのため、発見された準周期的振動も中心天体の振動に強く依存すると思われる。特に、低い振動数を説明する方法は限られており、そのうちの最もシンプルなものとしてクラストにおけるズレ振動がある。 これまで、我々は観測された準周期的振動数をクラスト振動と同定することで原子核飽和パラメータへの制限を試みてきた。これに対して、同じ天体から新たな準周期的振動数が最近発見された。そこで、これまでに観測された準周期的振動を含む、観測された全ての振動数の理論的説明に取り組んだ。この結果、クラスト振動を用いたこれまでの枠組みで観測された準周期的振動を説明することができることがわかった。これにより、軟γ線リピーターで観測される準周期的振動の起源としてクラスト振動が有力であることが示せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軟γ線リピーターからの準周期的振動を理論的に説明するために、我々は中性子星のクラスト振動に着目してる。磁場の効果を無視する限りにおいては、電子遮蔽の効果を取り入れた可能な限り現実的なモデルで解析を行っている。クラストとコア領域の境界には非一様原子核構造の存在が理論的に示唆されているが、その効果を取り入れた解析を今後行っていくことで、原子核飽和パラメータへのさらなる制限ができるかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
中性子星の構造において、表面付近の固体層(クラスト)の大部分の領域は球形原子核が体心立法格子を組んでいると考えられている。しかし、クラストの最深部では非球形の原子核構造(パスタ構造)が出現すると理論的には予想されている。このようなパスタ構造の効果はこれまで無視してきたが、より現実的な中性子星モデルを考える上ではパスタ構造の影響も無視できない。特に、ズレ振動の高調波はクラストの厚さに依存することが知られているため、パスタ層の存在は高調波に強く現れるかもしれない。 まずは、これまで行ってきた球形原子核での解析と取り扱いが似ていると考えられる球形空孔(バブル)領域に関するズレ振動に着目するつもりである。さらに、非球形原子核におけるズレ振動の解析においては、そのような形状におけるズレ弾性率を導出する必要がある。その後に、パスタ構造の効果を取り入れたクラスト振動の解析をすることで、原子核飽和パラメータへの制限に迫る。
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Research Products
(11 results)