2015 Fiscal Year Annual Research Report
水分解触媒部位の周辺環境から理解する光合成蛋白質における酸素発生反応
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical conversion of solar energy by artificial photosynthesis: a breakthrough by fusion of related fields toward realization of practical processes |
Project/Area Number |
15H00864
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石北 央 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00508111)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人工光合成 / プロトン移動 / 光化学系II |
Outline of Annual Research Achievements |
「地上に降り注ぐ太陽光から有益なエネルギー源となる物質を生産する」という人工光合成の実現は、光化学系II (Photosystem II,PSII)の立体構造(Umena, Kawakami, Shen, Kamiya. Nature (2011))解明により、ますます現実味を帯びてきた。分子構造がわかれ ば原子間相互作用を解析することでその分子が行う化学反応の様子も見ることができるからである。一方で得られた結晶構造を眺めるだけの研究手法では理解に限界がある。本研究では、PSII結晶構造を分子化学の立場で、理論化学的手法を用いて解析することで、PS II水分解・酸素発生反応機構の解明を目指した。PSII結晶構造内での水素結合パターンの決定をQM/MM法(2013年ノーベル化学賞受賞対象となった手法の一つ)で解析した。X線結晶構造解析では水素原子は見えておらず、水素原子が見えない。そこで、まず妥当な水素原子の位置および水素結合パターンを決定した。その後、プロトン移動経路の候補となる部位の水素結合において、水素結合エネルギーのポテンシャルを計算した。その結果、触媒部位Mn4CaO5近傍から蛋白質表面につながるプロトン移動経路を見つけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今まで「分解される水=基質の水」と言われていた酸素原子サイトO5ではなく、別の酸素原子サイトO4からプロトン移動経路が蛋白質表面上まで述べていることを理論化学的に証明した。すなわち、O4が分解されてH+を放出し酸素となる水、であることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
O4が基質の水であるならば、H2Oから二つのプロトンを外さないと酸素O2は生成できない。今回明らかにしたのは1個のプロトンの放出過程である。今回の結果で、O4が基質であることが示された、すなわちもう1個のプロトンもO4から放出される可能性が高い、との手がかりを得たことになる。この残りのプロトンの放出過程を明らかにすることをめざす。
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Research Products
(2 results)