2015 Fiscal Year Annual Research Report
籠型配位子を用いた酸素発生中心のモデル構築
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical conversion of solar energy by artificial photosynthesis: a breakthrough by fusion of related fields toward realization of practical processes |
Project/Area Number |
15H00874
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
畑中 翼 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80595330)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多核マンガン錯体 / 多座配位子 / 酸素発生中心 / 酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では酸素発生中心のマンガンクラスターを模倣する錯体の合成法の確立、得られたクラスターを用いた水の酸化反応の機構解明、および高効率な水の触媒的酸化反応の達成を目的としている。平成27年度は先行研究によって確立したマンガン多核錯体の合成法の改良、および得られたマンガンクラスターにさらに酸化剤や塩基を作用させ、酸素発生中心にさらに近い構造モデルの構築を検討した。具体的には、配位子の置換基を変えるなどの工夫を行った結果、収率が大幅に改善し、種々の物性測定や反応に用いるのに十分な量のクラスター化合物を合成することが可能となった。また得られた種々のマンガンクラスターの電気化学測定を行ったところ、クラスターの骨格構造に依存して酸化波の電位が異なることが明らかとなった。さらに電気化学測定の結果を踏まえ、化学酸化を検討したところ、二電子酸化されたクラスターが得られることが明らかとなった。 また、それと並行して、新規な多座配位子の合成およびそれを用いた多核マンガン錯体の合成を種々検討しており、得られた錯体を用いた水分子の取り込みおよび酸化反応を観測した。配位子の骨格を工夫することで、金属周りが同様の配位環境を有する単核、二核、三核マンガン錯体を系統的に合成可能であり、また核数が増えるごとに、金属の酸化電位が負側にシフトしていく、すなわち酸化が容易になることが明らかとなった。これらの錯体のマンガン中心には水分子が配位しており、今後さらなる酸化反応を行うことで、その水分子の変換反応を観測する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画として掲げていた、酸素発生中心を良く模倣するマンガンクラスターの合成法を確立し、目的のクラスターを高収率で得ることができるようになった。この成果により、物性測定およびさらなる反応の検討が可能となった。実際に検討したところ、それぞれのクラスターの酸化還元挙動が明らかとなり、またクラスターを二電子酸化した生成物の単離および構造解析に成功した。これまでに酸素発生中心に関連する研究は多くなされてきたが、マンガンクラスターの酸化還元挙動と構造変化の関係を実験系で観測できた例はないため、非常に重要な成果が得られたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に合成した多核マンガン錯体の酸化反応および脱プロトン化反応をさらに行い、精密な酸素発生中心の電子構造を再現するモデル構築を行う。目的の生成物が得られた際には、順次単結晶X線構造解析を行い、クラスターの立体構造の変化を観測する。またESR、SQUID等を用いて磁気的性質を測定し、DFT計算の結果とあわせて評価することで、得られたクラスターの精密な電子構造を理解し、酸素発生中心がなぜ高効率に水を酸化することができるのかを明らかにする。 また同時にこれまでに合成してきたマンガンクラスターを用いて触媒的な水の酸化反応を検討することで酸素発生中心の反応モデルとしての価値を評価する予定である。
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Research Products
(26 results)