2015 Fiscal Year Annual Research Report
ワイドギャップ化したカルコパイライト半導体光カソードによる高効率水分解反応
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical conversion of solar energy by artificial photosynthesis: a breakthrough by fusion of related fields toward realization of practical processes |
Project/Area Number |
15H00875
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池田 茂 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 准教授 (40312417)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水分解水素発生 / 太陽光利用 / 人工光合成 / 化合物半導体薄膜 / 光電極 / 表面修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らはこれまでに、ナロウギャップ半導体であるCuInS2、Cu2ZnSnS4などのp型化合物半導体薄膜を光吸収層とする水分解水素発生に取組んできた。この系では、p型薄膜表面に薄いn型半導体層を積層させてp-nヘテロ接合を形成させ、さらにその表面にPt触媒粒子を添加することで外部バイアス電圧印可条件での水分解水素発生が効率よく進行する。太陽光変換効率の向上には、(a)必要な外部バイアス電圧を低下させるためのバンド構造(エネルギー構造)の制御と、(b)光生成したキャリアの再結合によるロスを抑制しつつ効率的に取り出すためのp-n界面積の増大が重要である。本研究では、これらに基づいた光電極の設計を実践し、太陽電池に匹敵する超高効率な水分解水素発生光電極を開発することを目的とする。 平成27年度は、光吸収を担うCIS薄膜のInサイトおよびCuサイトの一部をそれぞれGaおよびAg置換すつことによるエネルギー構造の制御を図った。Gaの部分置換では伝導帯下端(CBM)のエネルギーの不安定化と価電子帯上端(VBM)のエネルギーの安定化が生じること、また、Ag置換ではVBMのエネルギーの安定化が顕著に生じることが明らかになった。水素発生のオンセット電位はこのような置換によって酸化側にシフトする、すなわち、外部バイアス電圧を低下させることを見出した。いずれの元素置換でもVBMの安定化が生じていることから、このようなエネルギー構造の変化で、潜在的な光起電力が増大したことが、主な要因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ナロウギャップp型半導体とワイドギャップn型半導体とのp-nヘテロ接合からなる太陽電池における拡散電位は、p型半導体薄膜のVBMとワイドギャップn型半導体修飾層の伝導帯下端(CBM)の相対的な電位で決定され、開放電圧は拡散電位の大きさに依存する。また、(キャリア再結合の影響を除けば、)開放電圧は、拡散電位のほか、p型半導体薄膜のCBM位置とn型半導体のCBM位置の差(バンドオフセット)で決定されると考えられる。本研究では、p、n各半導体のバンド構造を制御し、(太陽電池における)開放電圧の増大と、その効果に追従した水分解系における低バイアス電圧化を実現することが主な計画の一つであり、本年度の成果はまさにその実証に値するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続きバンド構造制御に関する研究を進める。特に、表面修飾相となるn型半導体の伝導帯下端の制御CIS系薄膜とは別のレアメタルを含まない化合物薄膜をベースとする電極開発により、「使える光電極」としての基礎材料系を確立する。また、さまざまな表面修飾手法を用いて電極表面に微小な凹凸形状を積極的に導入することを試み、それによる電流効率の増大効果についても検証し、本光電極系の優位性を明らかに示す。
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Research Products
(9 results)