2015 Fiscal Year Annual Research Report
低温条件での光化学的CO2多電子還元反応と新規ルテニウム-ペプチド錯体の触媒作用
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical conversion of solar energy by artificial photosynthesis: a breakthrough by fusion of related fields toward realization of practical processes |
Project/Area Number |
15H00882
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
石田 斉 北里大学, 理学部, 准教授 (30203003)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 二酸化炭素還元 / 人工光合成 / 光触媒 / ルテニウム / 活性化エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
光反応は、1光子の吸収に対して1電子しか移動しないことから、多電子還元反応は一般的に難しいと考えられている。本研究では、ルテニウム錯体触媒を用いた光化学的CO2多電子還元反応を目的に、低温条件下での反応を行うことによって反応中間体の安定化を図るとともに、錯体触媒にペプチド配位子を用い、活性中心近傍に水素結合性官能基を導入することによって、反応中間体を安定化させることを検討する。これらの研究によって、従来困難とされている光化学的多電子還元反応を可能にするだけでなく、電気化学的還元反応と光化学的還元反応の相違点について、人工光合成構築に有用な知見を得ることが期待できる。 本研究初年度である平成27年度は、すでに室温条件下で触媒反応が進行することが知られている、ルテニウム錯体触媒を用いた光化学的CO2還元反応について、反応中間体が安定化することが期待される低温条件下における反応を行った。まず初めにプロトン性であり、比較的低温条件下でも反応可能な溶媒を検討し、最終的にエタノール/N,N-ジメチルアセトアミド混合溶媒中で反応が効率よく進行することを見出した。またエタノール比率が40%のときに触媒活性が最も高くなることから、同溶媒中、-30℃から40℃の温度範囲でCO2光還元触媒反応を検討した。CO2還元生成物は一酸化炭素およびギ酸であり、主に一酸化炭素が主生成物として観測された。低温にするにしたがっていずれの生成物も減少したが、一酸化炭素の生成比が増大する傾向が見られた。このことは一酸化炭素生成の温度依存性よりギ酸生成のほうが大きいことを示しており、同反応の活性化エネルギーについて情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、初年度である平成27年度は低温条件での光触媒反応を行える装置をセットアップできた。また、触媒反応に拡散過程が含まれ低温条件下では反応が進行しないことが懸念されていたが、エタノール/N,N-ジメチルアセトアミド混合溶媒中で反応が十分進行することが明らかとなり、予定通り実験を行うことができた。また、ルテニウム-ペプチド錯体による触媒活性を検討する前に、無置換錯体における触媒反応の活性化パラメーターなど興味深い情報を得ることができ、計画通り進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の平成28年度は、ルテニウム-ペプチド錯体を触媒とする光化学的CO2還元反応について検討する予定である。これまで低温条件下での研究がされておらず、無置換錯体を触媒とする光反応に関する基礎的な情報も欠如していることが、この1年間の研究で次第に明らかとなってきた。これらの実験を並行して行うことで、ペプチド導入により触媒活性がどのような影響を受けるか、とくに活性化エネルギーへの効果について検討する予定である。
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Research Products
(15 results)