2015 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属触媒を用いる含高周期元素有機化合物の合成と変換
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
15H00911
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有澤 美枝子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50302162)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高周期ヘテロ元素 / ロジウム触媒 / パラジウム触媒 / 有機イオウ化合物 / 有機リン化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロジウム・パラジウム触媒を用いて、高周期ヘテロ元素化合物の高効率合成反応を検討した。本年度は、シクロアルキンにイオウ単体が付加して触媒的に対称1,4-ジチインとチオフェンを与える反応を見出した。アセチレンジカルボン酸とシクロアルキンあるいはビニルエーテルを反応させると、非対称1,4-ジチインあるいは非対称ジヒドロ-1,4-ジチインを選択的に与えることを示した。本反応は、ロジウム触媒がイオウ単体を活性化してジチオロジウム錯体の形成を経て進行することを確かめた。なお、アルキンとイオウ単体に二硫化炭素を反応させると、触媒的にトリチオカーボネートが得られたことから、ジチオロジウム錯体はイオウを一原子ずつアルキンにトランスファーすることが分かった。 この研究の過程で、パラジウム錯体がチオエステルのC-S結合を切断してノルボルネン誘導体に付加する反応を見出した。この方法によって、β-位にチオ基を有するケトンが合成可能になった。これは、チオエステルC-S結合を切断してアルケンに付加した初めての例である。 本研究で見出した高周期ヘテロ元素化合物の触媒合成は、多くの場合に平衡反応であり、効率的に生成物を得るためには平衡を制御する必要がある。本年度は、生成物除去による平衡制御を開発した。ロジウム触媒ジスルフィド交換反応は、3種のジスルフィドをモル比1:2:1で与える平衡反応である。キラルシリカナノ粒子の不斉認識を利用すると、ジスルフィド交換平衡反応下から1種のジスルフィドを分子認識して凝集し反応系から除去できた。結果として、平衡を生成系に移動させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ロジウム・パラジウム触媒が高周期ヘテロ元素化合物の合成に利用できることを示した。この過程で、金属塩基を利用しない本触媒法では、多くの場合に平衡反応系になることを示した。平衡系は結合生成反応に加えて、結合切断変換反応を同一の触媒を用いて実現できる利点がある。本研究では予備的に、イオウ単体とアルキンからロジウム触媒的に合成した1,4-ジチインのC-S結合を同一触媒下切断し、異性化・脱硫・イオウ原子付加反応といった多様な変換を触媒的に行えることを見出した。 加えて、有機リン化合物の触媒的合成法について新しい知見を得た。ロジウム錯体と(PhP)5の反応では、ロジウムジホスフェン錯体が生成し、予備的にリン原子の移動反応に利用できることを示した。更に、本触媒系は高周期ヘテロ元素化合物の合成に加えて、ジアリールエーテルC-O結合やフルオロベンゼンC-F結合の切断変換反応に利用でき、高周期ヘテロ元素化合物合成時の基質前駆体になることを示し、当初の計画以上の成果を見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
ロジウム・パラジウム触媒系を用いると、有機金属試薬や塩基を用いずに、無機塩を副生しない高周期ヘテロ元素化合物の合成を行えることを示した。このような触媒反応系はしばしば平衡反応系になる。高周期ヘテロ元素化合物は第2周期ヘテロ元素化合物を比較して結合エネルギーが弱く酸素等に不安定である。そのため、キラルシリカナノ粒子の不斉認識を利用して、比較的不安定な生成した高周期ヘテロ元素化合物を選択的に分子認識・凝集し、効率的に平衡移動を行う工夫を行う。本方法論は、結合生成反応および分離過程のいずれも独創性の高い方法論で、新しい成果が期待できる。 最近、高周期ヘテロ元素を二原子有するロジウム錯体を単離し、これが活性前駆体であることを示すことができた。π-逆供与可能なリン配位子とσ-供与可能なリン配位子を多数合成し、活性前駆体の触媒活性を制御する。複数の高周期ヘテロ元素 (S,P,Cl,Si,As,Se,Te等) の活性化を多面的に行い、触媒活性を評価することで、本研究の目的を達成できると考えている。
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Research Products
(11 results)