2015 Fiscal Year Annual Research Report
ヒドリドシリレンを感応性化学種とする触媒機能の設計・開発
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
15H00919
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中田 憲男 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50375416)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | シリレン / ゲルミレン / メタリレン / ルイス塩基 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、様々な配位子・置換基を駆使したヒドリドシリレンをはじめとする高周期14族元素二価化学種(メタリレン)を設計・合成し、これら感応性化学種を鍵とした遷移金属フリーな触媒システムの構築を目的としている。昨年度は、Lewis塩基部位を置換基内に導入した配位子を活用し、様々な高周期14族元素の官能性化学種の合成と性質の解明を行った。具体的には、①嵩高いリン配位子を有するケイ素-窒素二重結合化学種(シライミン)の合成と反応性の解明、②環状アミノゲルミレンの酸化反応による新規なゲルマイミンの合成検討、③[NSN]型ジイミドスルホネート配位子の設計と対応するゲルミレンおよびスタンニレンの合成と構造、について実施した。①では、嵩高いリン配位子を有するクロロシリレンとアジド化合物との反応から新規なシライミンを合成し、その反応性として基本的な親電子試薬であるメチルトリフラートとの反応を行った。結果として、ケイ素-窒素二重結合の高い分極に起因した付加反応が進行し、対応するシリルカチオンが生成した。②では、先述のシライミンと同様の置換基を使用した環状アミノゲルミレンと一酸化二窒素との反応から、ゲルマニウム-酸素間に二重結合を有するゲルマイミンの合成を試みた。しかしながら、目的とする化学種は極めて不安定であり、スペクトル的観測ならびに単離には至らなかった。一方、③では[NSN]型配位子の窒素上の置換基を代えることで異なるメタリレン生成物の生成を見出した。すなわち、窒素上がtert-ブチル基の場合では、従来の[NCN]型アミジネート配位子で見られるクロロゲルミレンならびにスタンニレンが合成されたが、窒素上がトリメチルシリル基の場合では予想外の反応が進行し、6員環構造を有する1,3-ビス(クロロメタリレン)が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、高周期14族元素二価化学種(メタリレン)を触媒とする新反応の開発を目標に挙げているが、現在までのところ触媒反応の鍵化合物となるゲルミレンおよびスタンニレンの合成に成功している。特に、使用する配位子の種類により構造が異なるメタリレンの生成を見出しており、触媒反応への展開だけでなく、単純な反応性の解明においても興味がもたれる。次年度では、これまでに合成に成功したメタリレンを使用した触媒的ヒドロシリル化反応などへの技術転換に向けて、新しい配位子の設計・開発や対応するメタリレンの合成・単離に向けて達成可能であると考えている。 一方で、本研究における最大の合成目標であるケイ素二価化学種、シリレンの合成には先の述べた[NSN]型ジイミドスルホネート配位子の導入では至っていない。しかしながら、本研究課題とは異なる成果から、関連性の極めて高いヒドロシリレン-イリジウム錯体の生成を世界に先駆けて初めて見出した。今後は、このシリレン錯体の反応性の解明から触媒反応への展開の可能性について検証し、本研究領域に貢献したいと考えている。さらに、[NSN]型ジイミドスルホネート配位子だけでなく、新たな[NPN]型ジイミドホスフィン配位子を使用したシリレンの合成と反応性および触媒反応への可能性についても探求していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、様々な置換基を有する[NSN]型および[NPN]型配位子を活用し、一連のシリレンをはじめとする高周期14族元素メタリレンの合成・単離を目指す。合成を目指すシリレンは、すでに多数の報告例がある[NCN]型アミジネート類縁体との系統的な構造比較や反応性の比較を行い、触媒反応への応用についても検証していく。その中で、ケトンやアルデヒドのヒドロシリル化反応およびヒドロホウ素化反応からシリレンの系において未だ達成されていない触媒サイクルの構築を完成させる。 また、仏国・ポールサバチエ大学の加藤剛博士ならびにAntoine Baceiredo博士との共同研究として、嵩高いリン配位子を活用したシリレンおよびゲルミレンの反応性について解明していく。特に、前年度単離には至らなかったゲルマニウム-酸素二重結合を有する新規なゲルマイミンの合成を行い、その分子構造について詳細な電子密度解析を本領域の公募研究者である理研の橋爪大輔博士に依頼し、その分極構造を明らかにする。 一方、先述のヒドロシリレン-イリジウム錯体についても、X線解析による詳細な構造決定と基本的な反応性を明らかにし、これらの知見から触媒システム構築のための配位子設計・改良と触媒反応の促進を目指した考察を行う。
|
Research Products
(35 results)