2015 Fiscal Year Annual Research Report
高周期14族元素配位子の感応性挙動を鍵とする不活性分子変換反応の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
15H00926
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鷹谷 絢 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (60401535)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,高周期14族元素-遷移金属間結合の「感応性挙動(動的挙動)」を触媒機能として活用することで,不活性分子の新規分子変換反応を開発することである。そのための分子設計として,従来の対称型PSiP-ピンサー型配位子に代わって,非対称PSiN-ピンサー型配位子を新たに設計し,これを持つ様々な錯体合成と,それらを用いた触媒反応開発に取り組んだ。 その結果,PSiN-ピンサー型配位子をもつ白金錯体を触媒として用い,ビスピナコラートジボロンをホウ素源として用いることで,フルオロアレーンをはじめとする電子不足アレーン類の炭素-水素結合の直接ホウ素化反応が進行することを見出した。本反応は,白金錯体を触媒とする初めての炭素-水素結合ホウ素化反応である。また興味深いことに,現在汎用されているイリジウム触媒を用いる反応系とは,そのホウ素化の位置選択性がことなることも明らかとなった。この特徴を利用することで,これまでホウ素化が困難だった,立体的に混み合ったアレーン類のホウ素化反応が可能となった。 これらの結果は,非対称型の高周期14族元素含有ピンサー型配位子という新たな配位子設計が不活性結合活性化反応に有効であることを実証したものとして大きな意義を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非対称PSiN-ピンサー型配位子を持つ白金錯体を用いることで,電子不足アレーン類の炭素-水素結合の直接ホウ素化反応の開発に成功し,論文発表することができたから(Chemical Communications, 2015, 51, 17762)。本結果は,当初想定したとおり,非対称型の配位子設計が不活性結合活性化反応に有効であることを示し,また高周期14族元素配位子の有用性を実証したものであり,本新学術領域の進展に大きく寄与するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
PSiN-ピンサー型白金錯体による炭素-水素結合ホウ素化反応をさらに発展させるべく,基質適用範囲の拡大に努めるとともに,白金以外の金属(ニッケル,パラジウムなど),あるいはケイ素以外の高周期14族元素配位子(ゲルマニウム,スズなど)について検討を行う。また,ホウ素以外の典型元素による炭素-水素結合の直接官能基化反応を試みる。例えば,アルミニウムやケイ素などの反応剤との反応を検討する。これらの検討によって,合成反応としての有用性を高めるとともに,高周期14族元素含有ピンサー型錯体の触媒機能の探求と研磨に努め,触媒設計における新指針として確立する。
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Research Products
(10 results)